ある研究は、耕作放棄地をうまく管理すれば、食料安全保障が強化され、気候変動が緩和される可能性があることを示した。(2023年12月14日公開)
シンガポール国立大学(NUS)自然気候ソリューションセンターの研究者チームは、最近の研究で、食糧安全保障への取り組みと気候変動の緩和のためには耕作放棄地が重要であることを証明した。この研究はNature Communications誌に発表された。
農地不足に対する懸念が高まっているにもかかわらず、耕作放棄地は世界中で大幅に増加している。そして、この傾向が報告されることはほとんどない。耕作放棄地は1992 年から 2020 年の間に世界中の大陸で1億100万ヘクタールという驚異的な面積となったが、利用すれば食糧生産を増やすことができる。
同センターのキミン・ジェン (Qiming Zheng) 主任研究員は、EurekAlertに投稿した記事の中で「気候変動や食糧不足などの世界的な課題に直面する中、各国は利用可能な土地の不足や、炭素隔離と食糧生産のどちらに土地を割り当てるべきかという難しい選択を突きつけられることが多い」と語り、この研究の重要性を強調した。
しかし、我々の調査から、耕作放棄地は比較的未開発の資源であり、これらの目的の一つ、または両方を達成するのに役立つ可能性があることが分かった。
世界の人口を養うという需要の高まりに応えるため、農業に利用される土地の面積はますます増えている。時には、熱帯林その他の自然生態系さえもその過程で犠牲になる。
この研究は、中央アジア、東アジア、アメリカ大陸、ヨーロッパ、ロシアに広大な放棄耕作地があることを教えている。この放棄耕作地を森林再生や再耕作に利用すれば、食糧生産に役立つ。さらに、この研究は、1億100万ヘクタールの耕作放棄地のうち、何と6,100万ヘクタールが農業目的に利用できることを力説している。そのような土地では毎年 2 億 9,200 万人から 4 億 7,600 万人を養える食糧が生産可能であり、それによって、新たな耕作地のために森林を伐採する必要性は小さくなる。しかし、放棄耕作地で成長した植生を伐採しなければならず、新たに栽培するならば排出量とのトレードオフが伴う。
この研究は、8,300万ヘクタールの放棄耕作地が森林再生に適していることも明らかにした。放棄耕作地に苗木が植えられ、森林が再生されれば年間最大10億6,600万トンの二酸化炭素(CO2)を吸収可能である。この量は日本の年間排出量とほぼ同じである。注目すべきは、利用可能な耕作放棄地の総面積のうち、約半分が森林再生と農業の両方に利用できると考えられることだ。そのため、政策立案者は国の優先事項と状況に基づき選択することができる。
放棄耕作地の使用にあたり、森林再生用か農業用かの選択は、国際貿易の開放性、地域政策、市場アクセスなどの多くの要因によって決定される。この研究結果は、十分に活用されていない放棄耕作地の可能性について、タイミングよく有望な知恵を授けてくれる。世界が気候変動と食料安全保障という差し迫った課題に取り組んでいる中、この研究は、すでに使用され、その後放棄された土地そのものの中にその答えがあることを示している。