【AsianScientist】クールペイントで都市部は1.5℃ 涼しく感じられる

クールペイントを屋根、壁、道路に塗ると熱の吸収が減り、建築物の環境が人々にとって快適になります。(2024年7月10日公開)

シンガポールの研究チームは、都市部でクールペイントを塗ると歩行者が最大1.5℃涼しく感じ、都市部が仕事やレジャーに適した場所になることを発見した。南洋理工大学の研究チームは都市部の熱を減らすクールペイント塗装の有効性を評価する研究行い、その結果は、Sustainable Cities and Society誌に発表された。

チームは、特に年間を通じて冷房が必要な暑い気候の中で、冷たい表面が都市の快適性に与える影響を理解しようとしてきた。しかし、建物とその周囲で流れるエネルギーを測定することは複雑なため、冷たい表面が地域の気候に与える影響を研究することは困難であった。今までのクールペイント塗装に関する研究のほとんどはシミュレーションか縮小モデルでの実験であり、実際の適用についてはあまり理解されていなかった。

建築資材が太陽光を吸収すると、資材は都市に過剰な熱を放出し、都市ヒートアイランド (UHI) 現象はさらに悪化する。UHI現象により、都市部は周囲よりも気温が高くなり、都市住民の健康と生活の質に影響を及ぼす。UHIのために都市は人が住むには暑すぎる場所となり、熱波が発生すれば、健康問題や死亡を引き起こすこともある。

屋根、壁、道路などの表面をクールペイントで塗装し、熱の吸収を減らして都市を涼しく保つことは、UHIの影響を軽減するソリューションであると語られてきた。クールペイントは太陽の熱を反射する添加剤を使用して調製されており、表面の熱の吸収と放出を減らすことができる。実規模のフィールド実験を行うにあたり、チームはシンガポール西部の工業団地にある4棟の建物を選択した。これら4棟の建物は、建物に挟まれた狭い通りである2本の平行な「ストリートキャニオン」を作っていた。「クールキャニオン」には屋根、壁、道路の表面にクールペイントが塗装され、もう1本のキャニオンには何も行われず、実験の対照として使用された。

チームは環境センサーを使用して、2か月間にわたって 2本のキャニオンの状況を観察した。チームは空気の動き、表面と空気の温度、湿度、放射を測定し、クール ペイント 塗装が都市の熱を減らす効果を評価した。

チームは「クールキャニオン」では建物の表面から放出される熱が24 時間で最大 30 パーセント減少したことを発見した。これにより、「クールキャニオン」では、1 日で最も暑い午後 4 時頃に、何もしなかったキャニオンよりも気温が最大2度低くなった。

したがって、クール キャニオンを歩けば、最大 1.5 度も涼しい気温の中にいることになる。

チームは、クールキャニオンの気温が低いのは、建物の壁、屋根、道路による熱の吸収と蓄熱が減ったためであることも発見した。本来ならば、周囲の空気や建物の内部が熱くなってしまうはずである。

さらに、チームは、クールペイント塗装をした屋根は、従来の屋根と比較して、晴れた日の最高気温時に太陽光を 50 パーセント多く反射し、熱を最大 40 パーセント少なく吸収することも発見した。加えて、塗装された壁は、工業団地の建物に侵入する熱のほとんどを防いだ。

エネルギー研究所の研究員としてこの研究を完了させた筆頭著者のE V S キラン・クマール・ドントゥ (E V S Kiran Kumar Donthu) 博士は「私たちの研究は、クールペイント塗装が熱の蓄積を減らし、都市環境を涼しくするという証拠を示しています。これは、都市冷却に大規模な都市再開発を必要とすることが多い他の選択肢と比べて、介入は最小限、かつ即効性のあるソリューションです。さらに、都市の建物に吸収される熱量を減らすことで、建物の熱負荷も減り、結果的に室内の空調エネルギー消費も減ります」と述べる。

NTUの機械・航空工学部 (MAE) の主任研究員であるワン・マン・パン (Wan Man Pun) 准教授は、「この研究結果は、一年中暑いシンガポールの都市だけでなく、世界中の他の都市にも当てはまります。地球温暖化に伴い、人々は涼しく過ごす方法を積極的に探すようになるでしょう。私たちの研究は、クールペイント塗装が将来、都市のヒートアイランド現象を軽減する戦略になり得ることを証明しています」と付け加えた。

NTUの研究チームは、次に同じ実験場所でクールペイント塗装の長期間性能について調べようと計画している。

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