週末の寝だめや早めの睡眠は多忙な週でも楽になるかもしれないが、睡眠不足の解消には役立たない。(2024年8月5日公開)
誰でも、睡眠不足になると朦朧として集中できなかった経験はあるだろう。シンガポール国立大学 (NUS) の研究者がSleep誌に発表した新しい研究によると、週末に寝だめをしたり、平日に早めに寝たりすることは役に立つように感じるかもしれないが、それで脳の機能が完全に回復するわけではないという。
睡眠不足は、情報処理、注意力の持続、記憶、感情の調整などの神経行動機能に悪影響を及ぼすことが知られている。以前、青少年を対象とした実験があった。この実験では、週末に睡眠不足を補おうとしても、平日の睡眠不足が繰り返されると、これらの機能はさらに悪化することが分かった。興味深いことに、成人を対象とした別の実験がある。この実験は4夜にわたり実施され、睡眠時間の長い夜がある場合は、短い睡眠時間が続く場合と比べて、参加者の注意力と思考速度が向上することが明らかになった。
相反するエビデンスがあるため、平日の不規則な短時間睡眠スケジュールの利点はまだ議論の余地がある。さらに、平日の睡眠不足と週末の寝だめの繰り返しが、成人にどのような影響を与えるかは不明である。
NUSの研究チームは、これらの不確実性を解消するため、21歳から35歳の健康な52人を、安定短時間睡眠群、変動短時間睡眠群、対照群の3つの群のいずれかに無作為に割り付けた。
16日間かけて行われた実験では、5夜の睡眠操作期間と1夜から2夜の回復睡眠を2サイクル行った。参加者全員が8時間睡眠をとる「週末」を除き、安定短時間睡眠群は5回の「平日」に6時間睡眠をとった。一方、変動短時間睡眠群は、第1夜から第5夜まで、8時間、4時間、8時間、4時間、6時間の睡眠時間をとった。
対照群は、常に8時間の睡眠をとった。神経行動機能を評価するため、参加者はコンピューターによる検査を1日5回受けた。
2つの短時間睡眠群は、十分な睡眠をとった対照群よりも認知力検査の成績が悪かった。短時間睡眠の繰り返しは注意力を低下させたが、毎晩の変動を取り入れることで、これらの問題を軽減することができた。しかし、変動のある睡眠スケジュールは、処理速度と記憶タスクにおける能力の低下を防ぐことはできなかった。
変動短時間睡眠群では、作業記憶と実行機能の低下が最小限であること、また注意力に与える効果について相反する文献があることから、チームは、睡眠時間の変動が睡眠不足の人に与える影響を十分理解するためには、複数のタスクや尺度を使用することが好ましいとしている。
実験結果は、睡眠不足が繰り返されても睡眠時間を数晩確保すれば悪影響を軽減できるが、完全な解決策にはならないことを示している。
この論文の共同執筆者であるNUS睡眠認知センターのジューン・ロー (June Lo) 助教授は「睡眠に関しては、ごまかすことはできません」と、ワシントンポスト紙に語った。
今回のエビデンスは、睡眠パターンが精神状態に与える影響の複雑さを浮き彫りにしており、社会人が睡眠不足の影響を軽減する方法を理解するためには、さらに研究を進める必要があることを明確に示している。一方、チームは、脳の機能を最適化するためには、年齢別の推奨に従って、毎晩十分な睡眠をとることが重要であることを強調している。
「それが難しいのは分かっていますが、できるだけ毎晩十分な睡眠をとるようにしてください」とロー助教授は語った。