【AsianScientist】植物肉に切り替えても糖尿病コントロールにメリットはない

植物由来肉は高度に加工されることが多いため、健康促進特性が変化する可能性がある。(2024年8月14日公開)

肉をやめて植物由来の食事に切り替えると心臓病や2型糖尿病のリスクが一貫して低下することが分かっている。しかし、The American Journal of Clinical Nutrition誌に発表された最近の研究によると、動物由来の肉の味と食感を模倣した植物由来の肉類似品 (PBMA) に切り替えても、心臓と代謝の健康改善にはあまり役に立たない可能性があることがわかってきた。

肉は歴史、文化、社会規範に深く根ざしているため、肉の消費を完全に制限することは困難であろう。持続可能性に関する懸念、動物福祉、植物由来の食事は健康にいいというイメージと相まって、PBMAの人気は世界中で高まっている。

食料品店で肉代替品を購入する買い物客が増えてはいるが、研究者たちは、この食生活の変化が健康に与える影響を理解する必要があると力説する。このことから、シンガポール食料・バイオ技術革新研究所の研究者たちが中心となって、PBMAを主なタンパク質源として摂取することは、アジアの人々、特に糖尿病のリスクが高い人々の心臓代謝の健康に何らかの利点があるかどうかを明らかにしようとする研究が行われた。

8 週間の研究では、82人のボランティアが2つのグループに分けられた。1つは動物性肉食 (ABMD) のグループ、もう1つは植物性肉食 (PBMD) のグループである。ABMDグループは、牛ひき肉、豚ひき肉、鶏胸肉、ハンバーガー パティ、ソーセージ、チキン ナゲットなど、6種類の冷凍食品を摂取した。一方、PBMDグループは植物性代替食品を摂取した。両群とも、それぞれのタンパク源約2.5人前を毎日摂取したが、残りの食事は普段の内容通りだった。

研究チームは、心臓と代謝の健康に関するさまざまな因子の変化を追跡した。因子とは、低密度リポタンパク質 (LDL) コレステロール値(動脈を詰まらせて心臓病を引き起こすことのある「悪玉コレステロール」)、血糖値、血圧などである。少人数のサブグループについては毎回の食事介入の前後に血圧を測定し、2週間にわたって継続的な血糖モニタリングも実施した。

この研究では、2つの群の食事についてコレステロールプロファイルの有意差は認められなかった。PBMD群では拡張期血圧が低かったが、ABMD群では夜間の血圧降下の改善がより顕著であった。さらに、どちらの食事も血糖コントロールは改善されたが、サブグループを綿密にモニタリングしたところ、動物性肉を摂取する方が、血糖値コントロールには効果的であることが明らかになった。

チームは「我々の研究仮説に反して、PBMDは、対応するABMDと比較して、心代謝系の健康に対する明確な有益性を立証できませんでした」と書いている。これらの結果は、独自の栄養プロファイルと心臓疾患や代謝疾患のリスクへの影響により、完全植物性食品の食事で観察される健康上の利点が、代替肉には当てはまらない可能性があることを示している。

PBMAは高度に加工された食品である。分離大豆蛋白やキャッサバ澱粉のような天然植物成分を分解・再構築して作られており、その健康促進特性が変化する可能性がある。糖尿病患者にとってABMDよりもPBMDが優れているという十分なエビデンスがないことから、完全植物性食品を豊富に含むバランスのとれた健康的な食生活を心がける方が有益であるかもしれない。

「しかし、これは食品業界にとって、栄養特性とバイオアクセシビリティが向上した次世代PBMAの生産を再評価する機会と刺激となります」とチームは強調した。

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