デング熱の生存者は、COVID-19から回復した人よりも心臓合併症を発症する可能性が55%高い。(2024年10月24日公開)
新たな研究により、デング熱から回復した人はCOVID-19から回復した人に比べて、約1年後に長期的な合併症を患うリスクが高いことが明らかになった。Journal of Travel Medicine誌に掲載されたこの研究によると、デング熱の生存者は、心臓、脳、免疫系に影響を与える問題に対して著しく脆弱であることが判明した。シンガポールの南洋理工大学 (NTU) が主導したこの研究はデング熱感染後31~300日で生じた健康問題を追跡し、その問題をCOVID-19生存者が経験した合併症と比較した。
調査結果から、デング熱の生存者はCOVID-19から回復した人よりも、不整脈、心臓病、血栓などの心臓合併症を経験する可能性が55%高いことが分かった。
研究者たちの指摘によると、デング熱感染後の長期的かつ多臓器にわたる合併症のリスクは、COVID-19からの回復後に見られるリスクよりもはるかに高い。このリスクがあるため、季節により流行病が発生する熱帯地方の国々では全体的にデング熱の影響が増大する可能性がある。気候変動によりデング熱を媒介する蚊の生息範囲が拡大しているため、危険にさらされる国は増えていくかもしれない。
この研究は、急性デング熱による疾病負荷は大きく、世界全体で年間89億ドルのコストがかかるとしている。
研究論文の筆頭著者でもあるNTUリーコンチアン医科大学のリム・ジュエタオ (Lim Jue Tao) 助教授は「気候変動によりデング熱の地理的範囲が拡大していることが、この研究を実施する動機となりました」と述べた。「デング熱は世界の中で最も一般的な媒介性疾患の1つであり、デング熱を原因とする健康問題は長期にわたるため、感染者と国の疾病負荷は大きく増加するかもしれません」
リム助教授は、以前行われた研究ではCOVID-19からの回復と長期的な合併症を関連させていたことについて言及し、それがデング熱とCOVID-19を比較した理由であると話した。さらに「私たちの研究は、人々が自身の環境の中でデング熱に備える必要性を明確にし、公衆衛生計画を支えるための資料になります」と付け加えた。
この研究はシンガポール全土で様々な民族のアジア人成人を対象に実施されたものであり、2021年7月から2022年10月の間にデング熱に罹患した住民1万1,707人とCOVID-19 (デルタ変異株とオミクロン変異株) に罹患した住民124万8,326人の医療記録を分析した。
データから、デング熱の生存者はCOVID-19からの回復者に比べて、不整脈、虚血性心疾患、血栓性疾患などの心臓合併症のリスクが55%高く、認知障害・記憶障害のリスクが213%高く、運動障害のリスクが198%高かったことが分かった。
香港中文大学の疫学者であるクウォク・キンオン (Kwok Kin-on) 教授は、この研究は回復後の健康問題についてデング熱患者とCOVID-19患者を総合的に比較するものであるため、重要であると述べた。
クウォク教授は「この研究は、医療計画と患者管理について貴重な知見を提供します。この所見から、デング熱生存者が受ける長期的な健康被害を軽減するためには、警戒の強化と的を絞った介入が必要であることがはっきりと分かります」と述べた。
研究者たちは、この研究にはいくつかの限界があることも認めた。研究対象は18歳以上の成人のみであるため、研究結果を子供に適用することはできない。また、研究者たちはCOVID-19やデング熱に関連するリスクに影響を及ぼす可能性のある遺伝・行動・環境の影響などといった個人的要因を考慮していなかった。
この研究は、NTUリーコンチアン医科大学、シンガポール保健省、シンガポール総合病院、シンガポール国立感染症センター、および国立環境庁が協力して行われた。