2024年11月11日 JSTアジア・太平洋総合研究センター
科学技術振興機構(JST)アジア・太平洋総合研究センターでは、調査報告書『インドネシアの研究開発動向と科学技術ガバナンス改革』を公開しました。
以下よりダウンロードいただけますので、ご覧ください。
https://spap.jst.go.jp/investigation/report_2022.html#fy23_rr07
インドネシアは高い経済成長と継続する人口ボーナスに支えられたポテンシャルの高い東南アジアの国であり、日本へ科学技術人材を多く輩出する国の1つである。2010年代後半、科学技術系省庁の統合と再編を1つの契機として科学技術イノベーション(STI)の能力強化が急速に進んでいる。本調査では、同国の現状と課題を、基礎指標および2010年代後半のガバナンス改革とこれに関連する法規の検討、および利害関係者へのインタビューから整理し、将来に向けた示唆と展望を導き出す。
はじめに各種指標からインドネシアにおけるSTIセクターの現状を概観する。インドネシアの現状は研究開発よりも社会経済的ニーズが優先され、研究資金に関しては財政支援が乏しく、基礎研究の商業化に際した特許制度の活用も十分に進んでいない。高等教育人材は増加しつつもSTEM分野では依然として就学率が低く、外国との人材交流(インドネシア人の外国留学)も東南アジア地域内では最も消極的である。現地の政策立案者、研究開発従事者、各種財団などの研究支援者へのインタビューから、これらの分析が実態に沿っていることも明らかになった。
現状の背景にある政策過程の複雑性と非効率性を打破すべく、科学技術系省庁を一元的に統合し、国立研究イノベーション庁(BRIN)が設立され、これを中心に科学技術ガバナンス改革が進んでいる。本調査から、上述の課題解決にむけたアプローチとして、以下の7 点が必要になると考えられる。
インドネシア国内での能力強化の推進とあわせて、日本との科学技術協力に関しては、両国の間にあるギャップを踏まえつつ、以下を示唆することができる。
日本にとってインドネシアは、人口と経済成長の面でポテンシャルの高い新興国であるのみならず、日本への留学生がインドネシアの科学技術の発展に貢献するなど歴史的にも長い友好関係を維持している。その成長過程における協力は、有用な科学知識の共有のみならず、関係性の緊密化という観点からも有益である。先端技術、インドネシアが優位性を有する天然資源・生物資源を活かした研究拠点や研究協力の開始は、特に相互利益をもたらし得る。そして人材交流の継続を通じて、前世代のレガシーを新世代に受け継ぐことが期待される。