【AsianScientist】GYSS2025、学際的アプローチで挑む地球規模の課題

シンガポールで開催されたGlobal Young Scientists Summit 2025で、講演者たちは若手研究者たちに対し、自身の専門知識を超えて、共同学際プロジェクトに参加するよう促した。(2025年2月20日公開)

人工知能 (AI)、高性能コンピューティング、エンジニアリングは、科学研究のほぼすべての分野に一貫して大きな影響を与えてきた。テクノロジーが進歩するにつれ、研究者はより優れたツールを活用して、あらゆる人々が関心を持つ問題を解決する。

分野を超えた協力はツールだけにとどまる必要はない。研究者たちが協力しあい、オープンでいるつもりであれば、全く異なる研究分野間で情報を共有し、刺激し合うことができる。

スタンフォード大学の物理学、分子細胞生理学、及びエネルギー科学工学のスティーブン・チュー (Steven Chu) 教授は「それはアイデアを共有することから始まります」と奨励した。彼は、シンガポールの国立研究財団が主催したGlobal Young Scientists Summit (GYSS) 2025の参加者たちに、アイデアが盗まれるなどと考えず、概念が共有できると考えるよう促した。

「外に出て人々と交流し、お互いを信頼し、アイデアを共有し、どこからともなくすぐに助け合って立ち上がることができるようになると、はるかに楽しくなることが分かるでしょう」と彼は付け加えた。

GYSSは2013年にシンガポール国立大学 (NUS) で初めて開催された。この会合は世界中から340人以上の若手研究者を招き、研究者たちは成果を発表し、他の研究者と会い、さまざまな分野の一流科学者の話を聞きながら、アイデアを共有した。

会合の最初の討論会は「世界の課題を解決する学際的アプローチ」というテーマで、一流の科学者が学際的協力の経験を話してくれた。オックスフォード大学セントジョンズカレッジの学長であるスー・ブラック (Sue Black) 教授は、法人類学者としてのプロジェクトの中で、手の甲で人の身元を証明する技術を開発した。このプロジェクトにはAIの専門家と解剖学者が関わり、法廷で児童性的虐待の証拠を提供するために開発された。

「一人の人がすべてのスキルを持っているわけではありません。[できないこと]ができるようになるには、他の人に頼らなければなりません」とスー教授は述べる。「統計的に見ると、人の手は一人ひとり非常に異なっているようです。想像するよりも、はるかに異なっています。手は人により異なるということは、自分一人では分かりません。チームでなければ知りえないことだったのです」

GYSS の多様な雰囲気は、参加者に、研究が開放的かつ包括的な中で行われるとき、協力の効果が高まることを実感させた。

ニューイングランド・バイオラボの最高科学責任者であるリチャード・ロバーツ(Richard Roberts) 博士は、全体講演の中で、STEM分野と研究で女性が直面する障害を力説した。

彼は「男性は、十分に理解せず女性に対して偏見を持つことが少なくありません」と述べた。「私は自分の経験からこれを知っています。振り返ってみると、私も女性に対して偏見のあることをしたことがあります。そのことを本当に後悔しており、それについて何かしたいと思っています」

リチャード博士はまた、さまざまな分野を経た自身の歩み、ノーベル賞を受賞したRNA スプライシングに関する研究、そしてニューイングランドバイオラボで彼が産業界のために行う役割について語ってくれた。

また「私はいつも、今やっていることよりも面白いことを見つけたら、恐れずに切り替えるべきと思っています」とアドバイスした。

パネルセッション中、スー教授は聴衆の若い研究者たちに対し、自分の分野の範囲を超えて自分を駆り立て、研究にインスピレーションと刺激を見出すようにすべきと促した。

「私は、他の研究者が何か言ったときに、今までそのように考えたことがなかったために、完全に頭が混乱してしまうような限界点に達することを考えています。そこでは学際性が重要になります。誰かが自分の知らないことを知っているというのは、魔法であり、気持ちが高ぶります。そして、それを知ることで、自分の世界が変わります」とスー教授はと語った。

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