東南アジアはデジタル革命を迎えている。人工知能(AI)、eコマース、クラウドコンピューティングの急速な発展に伴い、この地域は今や世界で最も意欲的なデータセンター開発の拠点となっている。
しかし、デジタル技術が東南アジア経済を変えていく中で、ASEANの法規制制度は依然としてデジタル化以前の時代に留まっている。
これは重要な疑問を提起する。「ASEANは、法律の近代化なしで、真に持続可能で回復力を持つデータセンター産業を構築できるのだろうか?」
マレーシアは、その点について分かりやすい例となっている。2024年、マレーシアはマイクロソフト、グーグル、アマゾンウェブサービスから233億米ドルを超えるデータセンター投資を誘致した。
これらの投資は、マレーシアの現代デジタル経済を牽引すると見られている。この新たな発展により、マレーシアは東南アジアのテクノロジーハブとしての地位を確固たるものにすると期待されている。しかし、インフラが最先端となっても、それを支える法律はまだ整備されていない。
以下にその問題点を挙げる。
この法律は、今日の計画上の優先事項と公共のニーズをうまく反映させるために改正する必要がある。最近、ジョホール州は、水と電力の節約を理由に、データセンター建設申請の約30%を却下した。このことからわかるように、現在でも投資家は規制上の課題に直面する可能性がある。
さらに悪いことがある。連邦憲法に基づく権限分割により、マレーシアでは連邦政府と州政府が特に行政事項において縦割りで活動することが多いのだが、このガイドラインでは、国の二重統治構造を克服することができない。この矛盾した法的環境のため、投資家にとっての不確実性、規制当局と開発業者にとっての支障、追加の経済的コストが作り出される。
国民にとって、これは、インターネット速度、サービスへのアクセス、そしてテクノロジー業界における雇用機会に影響を与えるデジタルインフラ構築の進捗が遅れることを意味する。
他のASEAN諸国も似たような問題に直面している。インドネシア、タイ、フィリピンは、断片化された規制、時代遅れの区画整理法、そしてあまり役に立たない環境監視に苦しんでいる。
この懸念は「ASEANデジタルマスタープラン2025」で注目を浴びた。マスタープランは、規制改革がなければ、ASEANは世界的なデジタル競争で後れを取るであろうと警告している。同様に、「ASEAN経済共同体ブループリント2025」は、インフラ投資を誘致するために、予測可能で透明性が高く、調和のとれた規制の確立を求めている。しかし、進展はあまり見られない。
「ASEANスマートシティ・フレームワーク」も、持続可能性の高いデジタルインフラの構築を求めている。加盟国に対し、分野をまたがるガバナンスモデルを導入することで、官僚主義的サイロを打破すべきと促している。
「ASEAN環境権フレームワーク」は、データセンターを含めたインフラ計画における環境的公平性の促進を始めようとしている。
しかし、これらの地域政策が効果を発揮するには、加盟国がそれらの実施に全身全霊を注ぐ必要がある。そうでなければ、政策は単なる願望にとどまり、実行可能なものにはならない。
シンガポールは、建築物環境持続法を使い持続可能性を強化し、冷房システムを熱帯気候に適したものにしている。
一方、アブダビ市はエスティダマ・パール評価・システムを活用し、あらゆる大規模開発において高いエネルギー効率と水効率を確保している。
これらの事例は、明確なルール、強制力、そして政府内のあらゆる階層による協力が存在する場合にのみ、持続可能なデータセンターは実現可能であることを示している。
では、ASEANは何ができるのか?
まず、ASEANは土地管理、計画、環境、建設に関する法律を整合させ、データシステムが国境を越えて繋がりやすいものにし、国際投資を惹きつけるようにする必要がある。これにより、ASEANは「ASEANデジタルマスタープラン2025」と「ASEAN経済共同体ブループリント」で設定された目標の達成に近づくことができる。
第二に、マレーシアやインドネシアのような国では、土地の承認を迅速化し、投資家にとって分かりやすくなるように、連邦政府、州政府、地方政府間の連携を強化する必要がある。
第三に、ASEANはデータセンターに関する共通の持続可能性基準を策定し、それをASEANの土地利用計画や環境権に関する目標と連携させ、世界的なESGベンチマークと整合させることができる。
データセンターは急速にASEANのデジタル経済の心臓部となりつつある。しかし、この心臓部は、過去に属する法的枠組みでは支えることができない。ASEANが真に持続可能なデジタル化した未来を望むなら、成長、環境問題、公共の利益のバランスを取る法律が必要である。
ASEANがマレーシアの経験から学ぶことができれば、スマートで持続可能なデジタルインフラの世界的なモデルとなることだろう。しかし、これらの教訓から学ぶことがなければ、ASEANの人々、投資家、そして環境は長期的なコストを引き受けなければならないと考えられる。
(2025年6月19日公開)