あるオンライン食品販売サイトは栄養に焦点を当てたデジタルアシスト機能を使い、顧客にヘルシーな食品を選択するよう促した。(2025年6月25日公開)
不健康な食事は、心臓病、糖尿病、がん、呼吸器疾患といった非感染性疾患の主な原因である。これらの疾患は、世界の死亡原因の71%を占めている。健康的な食事を促進する方法の一つは、販売時点で食品の包装に栄養情報を表示することである。ほとんどの食品の包装には栄養成分表示 (NFP) が記載されているが、消費者にとっては理解しにくいことが多い。そのため、多くの国では、製品の栄養価を一目で分かりやすく表示するために、パッケージ前面 (FOP) 表記や棚ラベルシステムを導入している。しかし、これらの手法でも、食品の選択においてわずかな改善が見られるのみである。
デューク・シンガポール国立大学(NUS)医学部の研究者たちは、もっと良い解決策はないか探し求めるうちに、人気上昇中のオンライン食料品店に目を向けた。研究者たちはソーシャルメディア広告を利用して、シンガポール在住の328人のボランティア参加者を募集した。参加者のほとんどは各家庭で買い物を主に担っている人たちだ。参加者たちは、3000点以上の地元商品を扱うフルサービスのオンライン食料品店NUSmartで、2つのグループのいずれかに無作為に割り付けられた。全参加者が、週に3回、自宅配送の注文をするよう指示された。1つのグループはサイトの標準バージョンで買い物をし、もう1つのグループはデジタル機能を使用した。デジタル機能では、商品に栄養スコアシステムに基づく信号機のような表示があり、緑は最も健康的な食品、黄色は中程度の食品、「X」印のついた赤は避けるべき食品とされている。この研究はAmerican Journal of Preventive Medicine誌に発表された。デューク・NUS医学部の研究チームは、これらのツールを組み合わせることで、今までよりもかなり大きな結果が得られた。
NUSmartはヘルシー度の高い選択肢を検索結果の上位に表示した。参加者がカートに商品を入れると、選択した商品の栄養成分の内訳を示す円グラフと、比較参考のための理想的なカートの画面がリアルタイムで表示された。さらに、買い物客は商品ページとレジで表示されるヘルシー度の高い4つの代替商品のいずれかをクリック1つで選択することもできた。
これらのツールにアクセスした参加者は、栄養スコアシステムで4.06ポイント高い食料品を選択し、フランスで使用されているNutri-Scoreスケールの「C」から「B」にアップした。これは、ラベルのみを用いた多くの似た研究で示され結果よりも改善度が高かった。買い物客はツールの利用を継続し、3つの買い物体験では、一貫してより良い選択を行った。
研究論文の筆頭著者であり、デューク・NUS医学部の保健サービス・システム研究プログラムのソイエ・シン (Soye Shin) 助教授は「食品のオンラインショッピングが急速に普及する中、私たちは、低コストで拡張可能なオンライン・ツールを設計し、そのツールは消費者が購入時に健康的な選択をするよう促すことができるかどうか調べたかったのです」と語った。「結果は、ツールが食生活と健康状態を改善してくれる可能性を示しています」
結果は有望ではあるものの、参加者たちは主に高学歴でデジタルに詳しい人々であった。シン助教授とチームは現在、社会経済的に低い立場にいて、栄養に関する意識があまりない消費者も対象に加え、ツールを広範な人口グループに適用する方法を調べたいと考えている。また、この方法のプラス効果が長期にわたって持続するかどうか、特に買い物習慣と消費者の健康に永続的な変化をもたらすかどうかも調べようと計画している。