生きた家禽が取引される市場で採取した環境サンプル中の遺伝物質を分析することで、鳥を直接スワブ検査するよりも、多くのウイルスを検出できる。(2026年5月14日公開)

生きた家禽が取引される市場はアジア各地に広く見られるが、感染症の拡散にとって高リスクな環境となっている。人間と鳥が密集して混在する中で、鳥インフルエンザやコロナウイルスなどのウイルスは鳥同士で容易に感染したり、人間に伝播したりする可能性があるため、発生を防ぐためには疾病の監視が極めて重要である。
現在、生きた家禽市場でのウイルス検出には、無作為に選ばれた鳥の咽頭や消化管から検体を採取するスワブ法が用いられている。これは時間と労力がかかるプロセスであり、作業員にバイオセーフティ上のリスクをもたらす。また、検査時に選ばれたトリが感染していない場合、ウイルスを検出できない可能性もある。
デューク・シンガポール国立大学医学部(Duke-NUS)の研究者らは、生きた家禽が取引される市場において、環境サーベイランスがより広範囲のウイルスを検出するための有効な手法となり得ることを発見した。
「生きた家禽の市場で病原性ウイルスを検出するために、動物を直接検査する必要は必ずしもないことを我々は明らかにしました」と、筆頭著者でありDuke-NUSの「新興感染症シグネチャー研究プログラム」の研究員であるピーター・クロニン(Peter Cronin)氏は述べた。
研究チームは、カンボジアの2つの生きた家禽市場から、空気、ケージの表面、飲料水、および死骸洗浄水などのサンプルを採取した。その後、サンプルに対してメタゲノム解析を行い、遺伝物質から環境中に存在するウイルスを特定した。
その結果を、同じ場所・同じ時期に採取された従来の鳥類スワブ検体と比較した。
検出されたウイルスの数に有意な差はなかったものの、環境サンプリングでは全体としてより多様なウイルスが検出され、特に空気サンプルからは最も多様なウイルス種が確認された。
重要な点として、環境サーベイランスでは、従来のスワブ検査では検出されなかったいくつかのウイルスを捕捉することができた。これには、ヒトにおける致死率が50%に達する鳥インフルエンザA型ウイルスであるH5N1も含まれる。
「この研究は、個体ごとの検査だけでは得られない、生きた家禽市場におけるウイルス循環に関する、より包括的な全体像を提供しています」と、共同シニア著者であり、新興感染症シグネチャー研究プログラムのディレクターであるギャビン・スミス(Gavin Smith)教授は述べた。
一部のウイルスは環境サンプリングよりも直接スワブで検体を採取する方法の方が検出は容易であるため、環境サーベイランスは従来の鳥類スワブ検査法を完全に置き換えることはできない。
研究者らは、ウイルス検出を最大化するための最善の戦略として、環境サンプリングと戦略的な家禽のスワブ検査を組み合わせることを提案している。これにより、生きた家禽市場環境に存在するウイルスの包括的な概要を把握しつつ、作業員へのバイオセーフティ上のリスクを最小限に抑えることができる。
「環境サンプルにバイアスのないメタゲノムシーケンシングを適用することで、共有空間の空気や表面に放出されたウイルス由来物質を捕捉し、動物との密接な接触の必要性を減らしつつ、費用対効果が高く拡張性のある方法で、より広範な検出が可能になります」とスミス教授は述べた。
また、環境サーベイランスは、的を絞ったリスク軽減戦略を可能にする。例えば、空気サンプル中のウイルス量が高い場合は、換気の改善が必要であることを示唆する。
「これらの知見は、高リスクな動物と人間の接触点におけるサーベイランスが、より効率的で安全なアプローチによって強化できることを示しています。早期検知能力の向上は、最終的にはより万全な、アウトブレイクへの備えにつながります」と、Duke-NUSの研究担当暫定副学部長であるロック・シーメイ(Lok Sheemei)教授は述べた。
同チームは現在、豚の食肉処理場や野生生物の生息環境など、他の環境においても環境サーベイランス研究を拡大している。この手法が洗練されれば、アウトブレイクの早期発見に向けた効率的かつ実用的なツールとなり得る。