2026年6月22日 JSTアジア・太平洋総合研究センター
科学技術振興機構(JST)アジア・太平洋総合研究センターでは、調査報告書『アジアにおける大規模研究インフラの整備と国際協力の状況に関する情報整理』を公開しました。
以下よりダウンロードいただけますのでご覧ください。
https://spap.jst.go.jp/investigation/report_2022.html#fy25_rr01
本調査は、文献調査および公開情報の整理、専門家へのインタビューを通じて、アジア主要国における大規模研究インフラの整備状況、運営体制、国際連携の実態を体系的に整理したものである。
第2章では、アジア各国の大規模研究インフラの概要、関連する政府の施策、運営状況、利用状況、国際協力の状況や、施設の優位性や今後の展望について調査し、整理した。
放射光施設分野では、中国、韓国、台湾、シンガポール、タイ、インドの施設についての情報整理を行った。日本がSPring-8、SACLA、NanoTerasuという機能の異なる複数光源を運用する独自の基盤を有している一方で、中国では国家重大科学技術インフラとして放射光施設が計画的に量的拡大を遂げていることなどにフォーカスして整理した。
電子計算機施設分野では、中国、韓国、タイ、シンガポール、インド、インドネシアの施設についての情報整理を行った。特に中国の国家級スーパーコンピューティングセンター群(NSCG等)が国家計画の下で急速に能力拡張を進めていること、韓国では韓国科学技術情報研究院(KISTI)を中核として法制度整備と人材育成を伴う一体的運営が行われていることなどがわかった。日本の「富岳」は単体性能・信頼性において世界最高水準にあることを確認した一方、国際共同利用制度の可視化が限定的である点を指摘した。
中性子線施設分野では、中国、韓国、インドネシア、インドの施設についての情報整理を行った。日本のJ-PARCと同じく核破砕中性子施設である中国のCSNSについては、J-PARCにおいて今後の継続的な研究開発を行わなければ、CSNS と性能が拮抗する可能性があることについても指摘した。
第3章では、各研究インフラの特性を踏まえた戦略的示唆を整理した。
放射光施設分野については、個別施設の競争力だけでなく、複数施設を組み合わせた複合利用基盤としての見せ方、および運営ノウハウ・人材交流そのものについても競争力とする戦略が重要であることを示唆した。
電子計算機施設分野については、計算性能の高度化に加え、AI・量子計算を前提とした役割再定義と、恒常的な国際共同利用枠組みの構築が今後求められることを示した。
中性子線施設分野では、J-PARCを核とした国際連携の深化に加え、他分野大型施設との連携拡大や、社会的理解を高める広報・アウトリーチの重要性を整理した。
これらを通じ、日本がアジアにおける大規模研究インフラの中核的プレイヤーであり続けるためには、施設ごとの強みを踏まえた役割分担と国際協調を戦略的に設計していくことが今後求められる。