有鉛ガソリンの廃止は公衆衛生上の大きな成果として歓迎されたが、研究者らは、産業、廃棄物処理、自動車排出ガスを主な原因とする鉛汚染が、マニラ首都圏でなお根強い脅威となっていると警告している。(2026年7月16日公開)

1920年代以降、自動車の燃費効率とエンジン性能を高めるため、ガソリンには鉛が添加されてきた。しかし、有鉛ガソリンの使用により、多くの人々が鉛中毒にさらされてきた。鉛中毒は、高血圧、腎臓障害、さらには子どもの脳の発達や認知機能の障害と関連している。
2002年、国連環境計画(UNEP)は、世界中の道路車両で使われる有鉛ガソリンをなくすためのプログラムを開始した。2021年には、世界で有鉛ガソリンの使用が終了した。UNEPによると、有鉛ガソリンの使用が公式に終了したことで、120万人以上の早期死亡が防がれ、年間2.45兆米ドルのコスト削減につながった。
しかし、鉛の脅威は依然として大きい。鉛蓄電池やその他の鉛含有製品が世界的に使われているため、鉛の消費量は有鉛ガソリン時代を上回る水準に達しているからだ。現在、環境中への鉛の流出量は過去のガソリン由来の排出量を上回っており、その結果、環境曝露が大幅に増えている。
フィリピンは深刻な鉛曝露の問題に直面しているが、最近のデータは不足している。この空白を埋めるため、アテネオ・デ・マニラ大学物理学科とマニラ天文台の研究者らを含む国際研究チームは、鉛同位体フィンガープリント法を用いて、2018年と2019年にマニラ首都圏で得られたエアロゾルデータを分析した。
その結果、鉛汚染は新たな形をとり、現在も静かに続いていることが判明した。首都圏における鉛汚染の主な発生源として、現代の産業活動、化石燃料の燃焼、過去に残された汚染が示された。この研究成果は学術誌『Atmospheric Environment』に掲載された。
この汚染を調査するため、研究者らはNASAのCAMP2Exプロジェクトの一環として、マニラ天文台で16か月にわたりエアロゾルサンプルを収集した。本研究では、大気質調査で一般的に用いられるPM10粒子と同様の5.6~10 µmの粒子と、鉛濃度が最も高かった0.56~1.0 µmの粒子という、2つの粒子サイズに焦点を当てた。
収集した粒子を分析し、水溶性鉛濃度と鉛同位体の両方を測定した。粒子サイズごとに汚染源がどのように異なるかを把握するため、粗大粒子と微細粒子は別々に分析された。
研究チームは、モンスーン期に風向が変化したにもかかわらず、マニラの空気中の鉛の化学的特徴が季節を通じてほとんど変化しないことを発見した。これは、鉛汚染の大部分が他国からの長距離輸送ではなく、地域内の発生源に由来していることを示唆している。
また、研究者らは、微粒子の方が粗粒子よりもはるかに多くの鉛を含んでいることを突き止めた。特に、通常は化石燃料の燃焼、産業活動、廃棄物処理と関連付けられる1 µm未満の粒子で、その傾向が顕著だった。
マニラの空気中の鉛同位体組成の特徴は、天然の岩石や過去の有鉛ガソリンよりも、ディーゼル、無鉛ガソリン、産業排出物、焼却灰などの発生源により近かった。研究者らはまた、過去にガソリンに使われた鉛の一部が、汚染された土壌がかき乱され、粉じんとして再び舞い上がる際に、今も大気中に入り込んでいる可能性があると指摘した。
さらにこの研究では、廃棄物や電子廃棄物の処理を含む産業活動が、大気中の鉛の最大の発生源であり、鉛汚染総量の約45~62%を占めていることが分かった。一方、自動車および燃料使用に伴う化石燃料の燃焼は、30~45%を占めていた。
マニラと、バンコクやシンガポールなど他の東アジア・東南アジアの都市を比較すると、同様の鉛同位体組成の特徴が確認された。これは、これらの都市が似た都市汚染源を共有しているため、あるいは地域的な風によって都市間で汚染物質が混ざり合っているためである可能性がある。
対照的に、北京やアモイなどより北に位置する都市では、石炭使用量の多さに関連するとみられる異なる鉛同位体組成のパターンが見られた。台湾やハイフォンなどの地域では、モンスーンの風によって国境を越えて運ばれる汚染の影響をより強く受けるため、鉛同位体組成のパターンに季節変動がよりはっきりと表れていた。
「データは2018年と2019年に収集されたものですが、その結論は現在も有効です。この研究は、有鉛ガソリンの段階的廃止によって得られた成果を後退させないために、大気中の鉛を監視することの重要性を浮き彫りにしています」と、本研究の共著者であり、アテネオ・デ・マニラ大学物理学科のマリア・オビミンダ・L・カンバリザ(Maria Obiminda L. Cambaliza)准教授は述べた。
「現在の鉛の発生源としては、電子廃棄物処理などの産業活動や、ディーゼル燃料の使用、無鉛ガソリンの燃焼といった化石燃料の燃焼が主に挙げられます。実際、微量の鉛は今も無鉛ガソリンから発生している可能性があります」と、同准教授は付け加えた。