【AsianScientist】 サンゴ礁の成長速度は、海面上昇のペースに追いつかない可能性がある

サンゴは急速な海面上昇に追いつけず、海洋生物や沿岸地域社会を脅かす恐れがある。(2026年11月2日公開)

サンゴ礁は、美しく多様性に富んだ海洋生態系として広く知られている。それだけに、サンゴ礁が水没してしまう可能性があるという事実は、意外に思えるかもしれない。

サンゴやその他の礁生物は、礁の構造を形成する硬い物質である炭酸カルシウムを生成することで礁を築き上げ、水面に近く、日光を受けられるようにしている。

海面上昇のペースがサンゴの造礁能力を上回ると、サンゴ礁は水深が増す水底に沈んでしまう。

シンガポールの南洋理工大学(NTU)の研究者らは最近、調査対象としたサンゴ礁地域の76%が、温室効果ガス排出量の多いシナリオで予測される海面上昇に追いつけないと明らかにした。

「サンゴ礁は数千年にわたり海面上昇に追随してきましたが、今後数十年で予想される海面上昇の速度は、ほとんどのサンゴ礁の限界を超える可能性があります」と、NTUアジア環境学部の副部門長であるモーガン(Morgan)准教授は述べた。

現在の海面上昇にサンゴがどのように反応するかを予測するため、研究者らはサンゴ礁コアとして残る古代のサンゴ礁記録を調べ、過去11700年間にわたるインド太平洋地域93か所の288件の記録を分析した。

サンゴ礁コアには、時間の経過とともに堆積した骨格炭酸塩の層が残されており、過去の海面変動に伴うサンゴ礁の成長パターンが分かる。これにより、科学者たちは個々のサンゴ群落だけでなく、サンゴ礁の構造全体を研究できる。

「個々のサンゴは比較的速く成長しますが、だからといってサンゴ礁全体が同じ速度で上方に成長するとは限りません。サンゴ礁コアは、成長、侵食、その他の自然プロセスを考慮した上で、どの程度の構造が保存されたかを示してくれます。これにより、サンゴ礁が将来の海面上昇に追いつけるかどうかを、より現実的に評価できます」と、NTUシンガポール地球観測所の研究員、リオヴィエ・ラモス(Riovie Ramos)博士は述べた。

この研究によると、海面上昇が年間5.3mmを超えた場合、サンゴ礁がその成長を維持できる可能性は極めて低くなり、このシナリオは35年以内に現実のものとなる可能性がある。

「そうなれば、サンゴ礁は徐々に水没していくことになるでしょう。生きたサンゴが残っている可能性はありますが、以前と同じようには機能しなくなり、より大きな波のエネルギーが海岸線に到達するようになり、沿岸地域社会へのリスクが高まる可能性があります」と、同准教授は述べた。

サンゴ礁は、波が海岸に打ち寄せる前にその力を吸収する役割を果たしている。サンゴ礁の上の水位が上昇すると、より大きな波がサンゴ礁を越えて押し寄せ、低地の沿岸地域や島々を浸食や洪水の脅威にさらすことになる。

サンゴ礁の水没は、食料や住処としてサンゴ礁に依存する海洋生物をも脅かし、漁業や観光を生活の糧とする地域社会にも影響を及ぼす。

研究者らは、サンゴの種類がサンゴ礁の形成に重要であると指摘している。古代のサンゴ礁を支配していた競争力の高いサンゴ種は、複雑なサンゴ礁構造を短期間で形成した。現在では、破壊された地域に定着できるが、構造を迅速に形成することはできない、ストレス耐性の高い「雑草のような」サンゴ種が見られることがますます多くなっている。

汚染や乱獲といった地域的な要因を抑制することは、成長を続ける健全なサンゴ礁を維持するのに役立つ。

しかし、こうした対策では、サンゴが追いつけないほど急速に上昇する海面水位を補うことはできない。サンゴ礁を守るためには、地域でのサンゴ保護戦略に加え、温室効果ガスの排出を大幅に削減することが必要となる。

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