2021年05月
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東南アジアのコウモリとセンザンコウ、新型コロナの関連ウイルスを保有

専門家によると、東南アジアのコウモリとセンザンコウ(全身がうろこで覆われた哺乳類)が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に関連するコロナウイルスを保有していることを示すエビデンスが見つかった。

Asian Scientist - 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの発端は今なお解明されていないが、ある研究グループが、東南アジアのコウモリとセンザンコウが新型コロナウイルスを保有していることを示すエビデンスを明らかにし、学術誌 Nature Communications に発表した。

それによると、新型コロナウイルスが広がった範囲は地理的に5,000キロメートル近くに及ぶという。

2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)の発生時には、ジャコウネコにおいて、蔓延していたSARS-CoVの株と99%の同一性を示すコロナウイルスが確認された。しかし、今回は、COVID-19に関連するSARS-CoV-2ウイルスの真の起源を見極めることが困難となっている。

これまでのところ、SARS-CoV-2と最も近縁の株は、中国からのコウモリのコロナウイルス株(RaTG13やRmYN02など)であり、SARS-CoV-2のゲノムの類似度は、それぞれ96%および93.6%ということが分かっている。関連するコロナウイルスはセンザンコウからも確認されているが、この類似性は、コロナウイルスがコウモリから出現したことを示す。

SARS-CoV-2の起源を特定するため、シンガポール国立大学のワン・リンファ(Wang Linfa)教授がタイのチュラーロンコーン大学の研究者らと共同で、タイ東部でキクガシラコウモリの生息地を調査した。RacCS203と呼ばれる分離ウイルスは、SARS-CoV-2に対してゲノムの類似性91.5%を示し、RmYN02と密接に関連している。

ヒト細胞へのウイルスの侵入を媒介するRacCS203のスパイクタンパク質に注目して詳細に調べたところ、宿主細胞に侵入する際に、ヒトのACE2受容体をこの株は使用できなかったことが示された。この発見は株のスパイクタンパク質が再結合した可能性を示唆すると研究チームは指摘する。また、SARS-CoV-2に関連するコロナウイルスがACE2に結合することなく宿主細胞に侵入する他の方法がある可能性も考えられる。

同チームはこのほか、タイ南部のセンザンコウに発見したように、研究の実施した地域のコウモリにも、SARS-CoV-2に対する高レベルの中和抗体があることを見つけた。これは、その地域に存在するSARS-CoV-2関連コロナウイルスについての詳細なエビデンスとなる。これらの発見を踏まえ、研究チームは、アジア中のコウモリの多くがコロナウイルスを保有していると確信している。

実際、SARS-CoV-2関連コロナウイルスは、中国やタイだけでなく、日本の岩手県でも発見されている。これらの全ての場所を考慮すると、SARS-CoV-2の関連ウイルスは、合計で4,800キロメートルに及ぶ地域で発見されている。

「今回の研究は、SC2r-CoVs(SARS-CoV-2関連コロナウイルス)の広がりは中国国内に限定されるものではないという考えを裏付けるエビデンスを詳しく示すものとなった。東南アジアは、関連するコウモリの種の多様性と、その数の多さから、そのようなウイルスのホットスポットとなりやすい可能性がある」と同研究チームは結論づけている。