2021年05月
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衛星利用で農業のイノベーションに限界はなし フィリピンのペレス氏の挑戦

フィリピン初の超小型衛星の打ち上げに貢献したゲイ・ジェイン・ペレス(Gay Jane Perez)博士のこれまでの取り組みは、農業のイノベーションにも限界はないことの証しといえるだろう。

Asian Scientist-太平洋の中部や東部の海洋の季節性の温暖化であるエルニーニョは、アジアでは数世紀にわたり、干ばつ、農業の衰退、飢饉を引き起こしてきた。おそらく15世紀半ばのクメール帝国の終焉も促したのではないだろうか。

フィリピン大学ディリマン環境気象学研究所のゲイ・ジェイン・ペレス准教授が衛星データを使い、エルニーニョの影響を軽減したいという思いに駆られ、農業生産を向上させるパイオニア的な仕事をしたいと思ったのは当然のことかもしれない。

ペレス氏は2018年、ASEAN-US女性科学賞のフィリピン人初の受賞者となり、その際、「衛星画像でフィリピンを見ると、気温と植生とが実際に関連していることが分かりました」と語った。2010年、エルニーニョ現象がフィリピンで発生していた当時、NASA(米航空宇宙局)にいたそうだ。

ペレス氏はフィリピン大学で物理学士、修士、博士号を取得。2010年、NASAゴダード宇宙飛行センターの水圏・生物圏科学研究所に特別研究員として入った。

衛星データの処理、分析、解釈を学んだ経験がリモートセンシングアプリの研究に役立った。さらに、フィリピン初の超小型衛星、Diwata-1を2016年に軌道に送り、2018年にMaya-1とDiwata-2を発射したチームの主導にも生かせた。

衛星は自然や文化遺産の監視、天候の乱れの観察やその他のさまざまな面で活用されている。その第一の対象は農業にあり、ペレス氏は衛星データを使って植生、表面温度、降雨量、土壌水分などを計測している。これにより、干ばつの影響を予測することができ、パイロットエリア内で行われた実験では、干ばつ発生を予測する精度は73%に達したという。

「農民はどこに何を植えるべきかだけでなく、干ばつに対しても、いつ潅漑するべきかの情報を早い段階で把握できるようになります」とペレス氏はフィリピン・デイリー・インクワイアラー(Philippine Daily Inquirer)のインタビューに答えている。

このプロジェクトの第2段階では、このような重要な情報がフィリピン全土の数百万人もの農民にも伝わるようにするため、作物学者や農業技術者と共同で個々に特化したシステムを開発するつもりだという。

ペレス氏は、精密農業の導入は世界中に広めることが可能であり、それは自然に広まって行くだろうと確信している。

「それを実現させるのが衛星データの利用なのです。画像の範囲が地球全体をカバーしており、しかもそれは精密農業に応用できる時空間解像度でも利用できるようになっています」

自身の成功を振り返れば、人格形成期を健全な家庭環境で過ごせたことが大きいという。彼女の両親ともに大学を出ていないのに、娘の進学を支援した。そのおかげで、本来なら途方もない夢である宇宙飛行士になることまで考えられるようになったという。

彼女の功績からすれば、その夢はいつかフィリピンで実現できるかもしれない。

「将来、自国から女性宇宙飛行士が誕生する可能性は非常に高いものといえます。もし国内で宇宙機関を設立でき、これまで培ってきた初期段階の宇宙科学技術を維持できれば、それは夢ではないでしょう」とペレス氏は期待を込める。

現実も動き出しており、フィリピンではペレス氏の受賞から1年後に、同国の宇宙庁創設を推進する法律が署名された。

アジアの農業やアジア圏内のその他の分野の優秀な研究者たちの情報については、以下より詳細を確認できる。

Asian Scientist Magazine(外部サイト):Five Years Of The Asian Scientist 100
https://www.asianscientist.com/as100whitepaper/