2021年05月
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銀抽出技術から即席麺改良まで斬新なアイデア続出 シンガポールのTechInnovation

オンライン開催となったテクノロジー仲介イベント「TechInnovation 2020」(シンガポール)では、スタートアップ企業、ポリテクニック、大学がクラウドピッチング・セッション(出展者が商業化やコラボレーションの機会のためにテクノロジーを聴衆に提示して売り込むためのプラットフォーム)を通じて4つのユニークなテーマで新しい技術やアイデアを提案した。

Asian Scientist - 発明者は、市場に参入可能な製品を送り出すことにあらゆる期待を寄せて、プロジェクトに彼らの真心と魂を込めてじっくりと時間をかけるもの。しかし、最終ステップは決してたやすいものではない。その製品が実際に形勢を一変させるものであることを皆に納得させる必要がある。クラウドピッチングは、イノベーターが自分のアイデアを熱心に売り込み、ソリューションの改善や製品化に役立つ産業界のパートナーや協力者を見つける絶好の機会となる。

TechInnovation 2020では、厳選された革新的なスタートアップ企業、ポリテクニック、大学の代表者らが、4つのクラウドピッチング・セッションで新鮮なアイデアと技術ソリューションを披露した。各セッションでは、イノベーションを刺激し、問題解決を目指したテーマが紹介された。それは「都市ソリューションとサステナビリティ」、「デジタル経済」、「健康とパーソナルケア」、「食品と栄養」だった。

持続可能なソリューションに向かって

都市ソリューションとサステナビリティに関するセッションで、各チームは環境に貢献するだけでなく産業界のパートナー候補にも資するソリューションを提示した。その中には、シンガポール・ポリテクニックのジェーン・コー(Jeane Koh)氏と彼女のチームは、固形廃棄物から銀を抽出する簡単なプロセスを開発した方法を紹介した。

これまでは、精製すべき混合物を抽出するのには有毒な酸を使用するしかなく、これはきわめて危険度の高い排水作業を必要としている。これに対しコー氏らが開発した方法は、より少ない精製でより多くの銀を抽出でき、しかも有毒物質を用いることなく、より低い温度で行うものだ。

「私たちの配合設計では、廃棄物からの銀のリサイクルは刺激性が少なく安全なプロセスになりました。これにより純度99%の銀のペレットを取り出すことが可能になります」とコー氏は話す。

Crystal Clear Environmental社(シンガポール)のフランク・タン(Frank Tan)CEOは、同社の排水処理と浄水ソリューションを発表した。同社は、既存の方法である高度な酸化プロセス(AOP)を生かしつつ、それを改良。望ましくない化学物質を固形廃棄物に変換し、簡単に除去できるプロセスを開発した。同社の経済的なAOP技術を利用している顧客らはこの方法を使えば、廃棄物処理と廃水焼却費用のコスト削減という利益も得ることができるという。

現実世界の危険からのデジタル保護

現実世界からバーチャル世界の課題にギアシフトした、デジタル経済に関するクラウドピッチング・セッションでは、サイバーセキュリティからロボティクスまでをカバーした。メモリストレージを手がけるFlexxon社(シンガポール)のメイ・チャン(May Chng)氏は、人工知能(AI)が埋め込まれた世界初の記憶媒体SSDとして「XPHY」という商品を紹介した。

XPHYは、既存の保護装置と連携して動作するように設計されており、変更やダメージの兆候を検出することができ、個人情報を安全に保つための最後の防御ラインとして機能する。フレクソン社ではさらなる技術改善を目指しており、事業に関心がある顧客、パートナー、投資家を求めている。

異なるデジタル安全問題に取り組んだのは、シンガポールの南洋理工大学(NTU)のイサン・ミハンカー(Ehsan Mihankhah)博士で、光検出測距(LiDAR)というイノベーションを発表した。このLiDARシステムは自律型ロボット、ドローン、無人運転車用に設計され、既存のセンサーを基に設計し、効果的に衝突を避けることを可能とした。LiDARのビームを機械の表面に分散させた光ファイバーに向けることで、この技術を装備した機器等は360度に視界を広げることができる。

瞬く間に病気を検出

健康とパーソナルケアに関するクラウドピッチング・セッションでは、韓国・漢陽大学校のリー・ドンユン(Lee Dong Yun)博士が糖尿病の検出で新しい方法を発表した。現状では患者はわずかな痛みながら指に針を刺す方法で血糖値を測定している。

血糖値の効果的な指標でもう一つ考えられるのが涙という。涙の中のブドウ糖はかなりの低濃度ではあるが、リー博士は高感度で信頼性の高いセンサーを備えたカラーメトリック・コンタクトレンズを開発した。これはスマートフォンと連動してデータを捕捉して分析できるという。

香港のスタートアップ企業MIND and Tech Limited 社のソリューションは、アルツハイマー病の検出に照準を合わせた。認知症の中で最も一般的なこの病態は、85歳以上の人々のほぼ3分の1に影響を及ぼし、治療コストも高くなってきている。プロジェクトマネージャーのウィン・ファンザ(Wing Fan Tze)氏は、この進行性疾患の検出キットを発表した。血液、唾液または尿のいずれかのサンプルからアルツハイマー病マーカーを検査することが可能で、シンプルで費用対効果が高く、非侵襲的だという。

栄養のニューフェイス

食品に関するクラウドピッチング・セッションでは2社がそれぞれ異なる方法で栄養価の高いソリューションを開発した。食品技術のイノベーター、NamZ社(シンガポール)は、インスタントラーメンで味がおいしい商品の多くは油揚げ麺という難点があり、健康的なノンフライ麺だと味気ない傾向があることに気づいた。そこでおいしくて、かつ栄養価の高いインスタントラーメンを提供するために、NamZ社は天然オイルとスパイスを使用したノンフライ麺の「NoodleZ」を開発した。

「当社のNoodleZは脂肪とナトリウムの含有率が低い割には、タンパク質と食物繊維の含有量は高く、しかも持続的な生産が可能です」とNamZ社のストラテジストで法律顧問のマーク・リム(Mark Lim)氏は話す。味や食感にも妥協はせず、麺の調理にかかる時間もお馴染みの3∼5分で済むという。

もう一つの発表では、Republic Polytechnic社(シンガポール)のチラデップ・チャタジー(Chiradip Chatterjee)博士のチームは魚粉への依存を減らすために新しい水産養殖用飼料を開発した。高価で持続不可能な魚の飼料への依存を減らすために、大豆副産物であるオカラをタンパク質の供給源として用いた代替オプションになるものだ。オカラは手頃な価格で持続可能なタンパク質資源である。通常、埋め立て地で処分されるか、バイオマス生産に利用されが、飼料としてアワビで試験した。市販の飼料と比較すると、オカラを与えた場合、養殖のアワビはより大きく、より早く成長することが分かった。

パートナーを求めるピッチング

問題を抱える者に問題を解決しようとする者、そこにクラウドピッチングやクラウドソーシングを組み合わせることで、コラボレーションが促進され、より強力なソリューションがもたらされる。産業界のプレーヤーは、新鮮なアイデアで問題を解決し、イノベーターはパートナーの経験と力量から恩恵を受けている。

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