ヘルシーな食生活を推進するため、シンガポールの研究者らが一般的なアジアンフードを血糖値への影響度順にランク付けした。
Asian Scientist - 寿司、チャーハン、チャパティ、フォーなど、アジアで人気の高い食べ物は挙げればきりがないが、これらの多くは、米、パン、麺類などの穀物系の炭水化物に偏りがちで、実に人口における総エネルギー摂取量の約 60%を占めている。
このような食べ物は、味は申し分ないが炭水化物が多く、健康上の問題をいろいろと引き起こす可能性がある。アジアでは特に糖尿病が問題視されており、世界の糖尿病患者数4億6300万人のうち、中国人は1億1600万人、インド人は7700万人を占める。
糖尿病の悩みを克服するべく、GI値(グリセミック指数)のような、食品ごとの血糖値の上昇度合いを表すものがある。GI値が高い食品(70以上)では、ブドウ糖がより早く放出され、血糖値のスパイクにつながる。その逆も同様で、低GI食品(55以下)を摂取すると、血糖コントロールが改善され、体重が減少し、糖尿病の合併症を防ぐことができる。
地域的に糖尿病の罹患率が上昇していることを踏まえ、シンガポール食品・バイオテクノロジー・イノベーション研究所 (SIFBI)のクリスティアニ・ジェヤクマール・ヘンリー(Christiani Jeyakumar Henry )教授を中心とする研究グループがアジアで人気のある食品のGI値を評価した。リスクに挙げられた5カ国の食品を選び、GI値が最高のものと最低のものを紹介する。
シンガポールでは、毎年約 19,000人が糖尿病と診断されている。糖尿病の発症率を下げるために地元メーカーは食品の糖質をカットしている。このような努力にもかかわらず、炭水化物は依然として地元の人たちの人気食品の多くを占めている。
例えば、ココナッツミルクを使ったコクのあるご飯料理「ナシレマック」=写真上=はGI値が100と最も高い料理の一つで、純粋なブドウ糖と同等の数値を示す。個別に見ると、コメ、ココナッツミルクともブドウ糖が高濃度に含まれており、それだけでGI値が96前後となっている。
一方、ビーフンは、細い米麺料理の一つであるが、GI値は最も低いグループでわずか35にすぎない。GI値が低いのは、おそらく脂肪油によって胃が空になることを遅くし、血流への糖の吸収速度を抑えるからと考えられている。
コメの生産高で世界第8位のフィリピンでは、当然ながら主食は米である。農務省によると、フィリピン人の平均的なコメの年間消費量は約118キログラムである。
フィリピンで長年愛されている「プト」は、ふっくらやわらかく蒸した発酵した餅で、1個あたりのGI値は90もある。このような高いGI値は、でんぷん質の炭水化物によく見られる。例えば、別の甘いデザート餅である「クチンタ」は、米粉を主原料としているため、GI値が80となっている。
一方、軽やかで空気をたくさん含む「マモンケーキ」は、意外にもGI値が48しかない。ビーフンと同様に、焼き菓子に油やバターを加えることでGI値が下がっている。
インドは中国に次いで成人の糖尿病人口が世界第2位である。現在の7700万人という患者数は、2045年には1億3400万人に膨れ上がると予想されている。遺伝学的要因や運動不足などの生活習慣が主な原因であるが、インド人の炭水化物の多い典型的な食生活も関係している。
例えば、主食のチャパティは、穀物のアマランサス粉で作られた丸くて平たいパンであるが、アマランサスの調理法によってGI値が大きく変化し、ゆでると、GI値は111に急上昇する。穀物の加工で脂肪分が減り、消化しやすくなり、血流に吸収されやすくなるため、GI値が驚くほど上昇するのである。
日本の伝統文化の中で、コメは重要な位置を占めており、宗教的な儀式でも祖先への供物として広く使われている。実は、日本語でコメを意味する「ご飯」は、食事を指す「ご飯」でも使われる。
国産のコメを使用したおかゆ=写真上=は、GI値が99と最高レベルである。一方、「サトウのごはん」のようなレトルトご飯の商品は、GI値が71とやや低めである。チャパティに使われるアマランサス粉のように、コメのGI値は調理法やコメの種類によっても異なる。レトルトご飯に比べて、おかゆのような煮たご飯は消化しやすく、GI値が高くなる。
一方、脱穀黄豆(yellow pea)を使った麺類のGI値は40.3と、日本食の中では最もGI値が低い部類に入る。ただし、麺をスープに入れたり、揚げ物と食べたりすると、脂質の含有量によって食事全体のGI値が変わってくるので注意が必要である。
中国政府は同国の糖尿病率の急上昇を憂慮して、「健康中国2030」計画において、管理されるべき4つの主要な非伝染性疾患の1つに糖尿病を含めた。行動計画では、成人の肥満とそれに伴う病気を減らすための「合理的な」食事療法の実施が紹介されている。
研究者によると、白米はGI値が81であるのに対し、添え物のおかずはGI値をどちらの方向に向けるかを左右するという。野菜を混ぜ合わせると、食事全体のGI値が20ポイント上がる可能性がある。たとえば、均質化されたチンゲン菜と白米のGI値は91であるが、均質化されていないチンゲン菜を含む同じ食事のGI値は71である。
白米と野菜はヘルシーな組み合わせであるが、肉とエシャロットを詰めた饅頭のGI値は39.1と低く優秀なため、血糖値をコントロールする人には、その饅頭の方が断然良いだろう。
SIFBIのヘンリー教授の研究チームは、この包括的なリストを提示し、GI値を下げよう助言している。例えば、炭水化物にオリーブオイルやバターなどの適度な量の脂肪を加えると、消化や糖の吸収が遅くなる。ただし、食品のGI値は、タンパク質、脂肪、ナトリウム、ビタミン、ミネラルのレベルのような他の栄養情報を提供するものではないため、注意が必要である。しかし、血糖値を気にする人にとっては、このリストはかなり有益となるはずである。