2021年06月
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「毎秒254兆、世界最速の乱数生成器」実現 暗号化技術でシンガポールなど3カ国が共同研究

小さいからと侮るなかれ―最新のレーザーは毎秒254兆の乱数の生成が可能となる。

AsianScientist - ある研究チームが毎秒254兆の乱数を生成できるレーザーを開発した。これは現行のものに比べて100倍高速である。この研究結果は、科学誌 Science に発表された。

パンデミックを経験した世界は今、オンラインバンキングやネットショッピングが隆盛を極めているが、取り引きの際のセキュリティの確保は最優先事項である。オンラインでの取り引きをハッカーや詐欺師から守る一般的な方法としては、一連の乱数をデバイスに送信して取引認証するワンタイムパスワード(OTP)がある。このような乱数は、インターネット上でのデータの安全な転送を可能にするものとして、クレジットカード番号やパスワードなどの個人情報を暗号化する場合にも使用されている。

日常生活ではさまざまな場面でオンライン化が進められていることを受け、データの暗号化をより安全かつ効率的に行う新たな方法を模索する研究がますます盛んになっている。レーザーを活用してまさにこれを実現したのが、シンガポール・南洋理工大学(NTU)、米国・エール大学、アイルランド・ダブリン大学トリニティカレッジの共同研究チームである。

レーザーは光を発するだけではなく、光強度の定期的な揺らぎに伴って乱数列を生成することもできる。ただし、従来のレーザーは均一なビームを得るために、そのような変動を最小限に抑えるように設計されていることが多く、乱数を迅速に生成する性能には限界がある。

同研究チームは今回、安定したビームの投射ではなく、その対極に狙いを定め、光のランダムなフリッカーを発生させる砂時計型の特殊な空洞を持つレーザーを開発した。この予測不可能な揺らぎが乱数列の基礎となる。レーザーを用いて生成された雪の結晶のような数字の列は、空洞内での光の相互作用がカオス的な性質を持つため、同じものは2つとないことが分かった。

このレーザーは長さが1ミリと非常に小さいが、毎秒約254兆の乱数生成を可能にすることを研究チームは発見した。この速度であれば、世界最大級の米国議会図書館の情報量に相当する乱数をわずか12秒ほどで生成できる。

このレーザーは、非常に強力であるだけでなく、エネルギー効率が高く、家庭用のコンセントでも動作する。チームは今後、このレーザーをチップに組み込み、乱数を直接コンピュータに送信することで暗号化を容易にしたいと考えている。

「現在の乱数生成器は安価で効果的だが、数字を生成するアルゴリズムがハッカーに知られてしまうと、将来の数字の並びを予測されて攻撃を受けやすい。我々のシステムは予測不可能な方法で数字を生成するため、同じデバイスを持っている人でも複製不可能であり、より安全性が高い」

共同執筆者のNTUのワン・キジエ(Wang Qijie)教授は胸を張る。

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