1世紀ぶりにシンガポールで発見された新種のホタルは、この都市国家の生物多様性に新たな光を投じている。
AsianScientist - 1世紀以上久しく発見されていなかったホタルの新種をシンガポールの研究者らが発見した。この研究成果は学術誌Animals誌で発表された。
夏の暑い夜を生物発光ならではの独特な光で照らすホタルの姿は、世界中で親しまれている。意外なことに、ホタルは世界に2,000種以上も多様な種が存在する甲虫の一種である。
シンガポールで、東南アジアのマングローブに生息するPteroptyx bearni Olivierというホタルが最後に記録されたのは、1909年である。それ以来、新種の観察例はなく、この種も現地では絶滅したものとみられている。
2009年、シンガポール国立公園局(NParks)は、全国14カ所でホタルの調査を開始した。その結果、ホタル属を指すLuciolaにちなんで「Luciola sp.2」と名付けられた未確認種を含む11種のホタルが記録された。
2019年、シンガポール国立大学(NUS)とNParksの研究チームは、国内に残る最後の淡水沼の森としても知られるニースーン沼の森に位置するホタルの生息地を再訪した。チームは、Luciola sp.2の追加標本の採取に成功した。
Luciola属には少なくとも280種が存在するため、研究チームは、Luciola sp.2がユニークな種であることを確認するために、最新のDNA技術による解析と内臓の解剖を行った。具体的には、ゲノムスキミングという生物のゲノムを浅く配列して、反復性の高い領域のデータを収集する方法を採用した。
これらはゲノムの氷山の一角とはいえ、得られた配列を解析することで、わずかな費用でLuciola新種の進化の歴史について確かな洞察を得ることができる。その結果、遺伝子的にも形態的にも新種であることが判明し、研究チームはこのホタルを「Luciola singapura(シンガポールホタル)」と命名した。
シンガポールホタルの体長は5ミリ以下で、淡水の沼沢地の森林ではホタルの生息がほとんど確認されていないため特に注目されている。シンガポールは国土が狭く、都市化が進んでいるにもかかわらず、新種が発見されたことで、地域の生物多様性調査を継続する必要性も高まった。
「この種に初めて出会ったとき、シンガポールの中央集水域にある淡水湿地林で採取された検体であることから、興味深いと感じました。この種の生息地からホタルが報告されることはほとんどありません。さらに、この種のホタルは、これまでに知られているホタルの種の説明とは一致しませんでした」 NUSのシンガポール リー・コンチェン自然史博物館(LKCNHM)に所属し、筆頭著者であるワン・ファリダ・アクマル・ジュソー(Wan Faridah Akmal Jusoh)博士はこのように語る。
「この新種の発見は、シンガポールの科学にとって非常に重要であり、ここにある最後の淡水沼の森を保護することの重要性を示しています。現在、シンガポールホタルの種の回復計画を立てていますが、この新しい発見はシンガポールのホタルの種と生態の理解にも貢献するでしょう」NParksのリム・リャン・ジム(Lim Liang Jim)氏は期待を表明した。