2021年06月
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世界初、高層ビル内の農業用地の適性評価に3D地理情報を活用 シンガポール国立大

シンガポール国立大学(NUS)は4月16日、3D都市モデルと都市のデジタルツインを組み合わせて、高層ビル内の農地の適性を評価し、さらに実地調査を通してその妥当性を検証することに世界で初めて成功したことを発表した。

都市型デジタルツインを紹介するフリップビルジェッキ博士。写真提供:シンガポール国立大学

都市型農業は近年世界的に規模が拡大しており、シンガポールでも土地利用の最適化や食糧庁の「30 by 30」ビジョンなど、革新的なアプローチが進んでいる。適地適作を行うためには農地の環境条件を知る必要があるが、従来の方法では現地で時間のかかる測定が必要だった。

今回の研究では、3D都市モデルと都市のデジタルツインを用いて、植物が光合成に用いる太陽光の波長域(PAR)に着目し、建物内のスペースが植物の栽培に十分なPARを受けているか高解像度でシミュレーションした。さらに、結果の妥当性を実地調査で検討し、この手法は実地調査に取って代わる可能性があり、より効率的であるという結論に達した。

「この研究は、建物内の農地の適性評価に3D地理情報を活用した初めての例であり、重要性を増している3Dデータの新たな用途を考案したことになります」と、研究代表者のフィリップ・ビルジェッキー(Filip Biljecki)博士は語る。

この分析手法はオープンソースから得られたデータやソフトウェアを用いて実行でき、都市全体に拡張することが可能なため、都市農業の可能性を明らかにし、計画戦略の策定に役立てることができる。また、同じ建物内で太陽光発電と農業の最適な組み合わせや配置を提案することで持続可能な開発を支援するための総合的なソリューションを提供することも可能となる。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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