2021年06月
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ポビドンヨードやマラリア治療薬でコロナの感染リスク軽減 シンガポールの研究

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染率が特に高い環境では、消毒薬のポビドンヨードの喉スプレーやマラリア治療薬のヒドロキシクロロキンの経口薬に感染拡大の抑制作用が見込まれるとシンガポールの研究チームが発表した。

AsianScientist ― 世界中でワクチン接種が実施されているが、ポビドンヨードをスプレーしたり、ヒドロキシクロロキンを経口投与したりするだけでパンデミックを抑制できる可能性があることをシンガポールの研究チームが発見した。この研究結果は、学術誌 International Journal of Infectious Diseasesに発表された。

新型コロナのワクチンは記録的な速さで開発され配備されているが、世界中で大規模なワクチン接種が完了するまでは、コロナウイルスは世界的脅威であり続ける。それまでは、マスクの装着やソーシャルディスタンスを取ることなどが、公衆衛生上の介入以外に減少させる実証済みの方法となる。

世界各地で新たな変異体などが出現する中、研究者たちは引き続き、ウイルスを封じ込めるための画期的方法の発見に懸命に取り組んでいる。シンガポールでは、ある臨床研究チームが、ヒドロキシクロロキン、ポビドンヨード、寄生虫薬のイベルメクチン、さらには昔ながらのビタミンCなど、他の疾患向けに試行や検証が重ねられてきた治療法に注目した。

検疫で隔離された健康な移民労働者3,037名を対象に、シンガポールで無作為臨床試験が行われた。これを実施したのは、シンガポール国立大学病院(NUH)、シンガポール国立大学(NUS)、同大がん研究所、同大心臓センターから集まった研究者たちのチームである。このチームは、上記の薬剤をさまざまに併用して試験を行った。

この試験では、42日間にわたる予防措置として、ヒドロキシクロロキンの経口投与、イベルメクチンの経口投与、ポビドンヨードの喉スプレー、亜鉛とビタミンCの併用、またはビタミンC単独のいずれかの経口投与を受ける群に分け、各宿舎のフロアを無作為に振り分けた。ビタミンCは、パンデミック以前からサプリメントとして広く利用されていたため、他の薬剤との比較対象として使用した。

試験では半数を少し上回る参加者(55.4%)が最終的に新型コロナの陽性反応を示したが、感染の頻度は、ヒドロキシクロロキン(49%)とポビドンヨードの喉スプレー(46%)を摂取した人の方が低かった。ビタミンCのみを摂取した人の70%が最終的に感染していた。

筆頭著者を務めたNUHおよびNUS医学部のレイモンド・シート(Raymond Seet)准教授は今回の試験について「閉鎖された感染リスクの高い環境で生活する隔離された人々の新型コロナ感染を減らすために、ヒドロキシクロロキンの経口投与またはポビドンヨードの喉スプレーによる予防療法が有効であることを実証した初の研究となりました」と強調する。

ヒドロキシクロロキンとポビドンヨードは入手しやすく安全性も確立されていることから、この2剤は、感染リスクの高い閉鎖された環境で生活する人々の新型コロナ感染を予防するための有効な戦略となる。著者らは、今後の研究では、高齢者、免疫不全のある人、合併症のある人といった感染しやすい人たちへの上記薬剤の長期投与による効果を調べるという。

「これら既存の薬剤は、ワクチンの接種が始まるまでの間、感染率が高い環境で既存の安全対策を補完するために使用できる」とシート准教授は話している。

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