2021年06月
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遺伝子のオンオフのスイッチで重要なタンパク質を発見 シンガポール国立大学

シンガポール国立大学(NUS)がん科学研究所のダニエル・テネン (Daniel Tenen) 教授が率いる研究チームは、細胞の遺伝子のオンとオフのスイッチの役割をもつ重要なタンパク質を見つけ、学術誌Nature Communications(電子版、2021年1月4日付)に発表した。

細胞の遺伝子は、タンパク質を作るためのアミノ酸配列情報がDNA鎖の中にあり、そのDNA鎖は染色体の中にコイル状に収められている。生物は、この遺伝子を正しく発現させるため、染色体を構成するDNAの構造を絶えず調整しており、CTCFと呼ばれるタンパク質は、DNA鎖を束ねて、染色体の三次元構造を調節する役割を持っている。また、染色体の三次元構造は、遺伝子発現の調節に関わっているので、CTCFの活性は遺伝子の発現に関与していることが分かっている。

研究チームは今回、赤血球や白血球、血小板を作りだすマウスの造血幹細胞を利用して、ジンクフィンガー143と呼ばれるタンパク質(ZNF143)がCTCFの活性レベルを制御していることを見出し、ZNF143を非活性化した造血幹細胞では、新しい血球細胞は作れなかったことを報告した。

この研究成果は、幹細胞機能やそれに関連する病気の原因の理解に役立つと考えられ、テネン教授は、「今回、CTCFがDNA鎖を束ねる際の調節機構やその遺伝子発現に関して新たな知見を得ました。われわれは、これらの結果が発達障害や悪性腫瘍と関連性があるかどうか調査することに関心を持っています」と話す。研究チームは今後、CTCFの分子構造の改変や分子構造を制御するプロセスを理解するための研究を計画している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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