2021年06月
トップ  > ASEAN科学技術ニュース> 2021年06月

卒業生らの雇用適性、大学との研究水準と関連 比研究者ら数学的モデル開発

フィリピンの研究グループが開発した数学的モデルは、卒業生らのエンプロイアビリティ(雇用適性)は大学の研究水準や国際化レベルの高さと関連があることを示した。

AsianScientist - 東南アジアの大学では研究件数と国際化のレベルが卒業生の高いエンプロイアビリティと関連していることをフィリピンのデ・ラ・サール大学(DLSU)の研究グループが発見した。この研究成果は、学術誌Cleaner Engineering and Technologyに発表された。

業界を問わず、教育が雇用を大きく左右することは周知の事実である。国にとって人材確保の生命線である大学等の高等教育機関は、主に、国の発展に貢献できる産業界で通用するような卒業生を輩出することを目指している。

雇用市場が急速に変化する中、大学側は、卒業生が自ら選んだキャリアで成功できるように、専門知識、コミュニケーション力、価値観を適切に組み合わせて提供しなければならない。全体論的な経験が重要であることは間違いないが、それを達成するための手段はそれほど明確になっていない。大学の責任者は、指導方法やカリキュラムの内容の変更から、交換留学プログラムやインターンシップの手配まで、さまざまな戦略を検討する必要がある。

これらの側面はすべて、充実した大学生活を送るためであるが、これらの戦略がどのようにして就職の見通しを良くするのかについては、決定的な証拠がない。このデータギャップを埋めるために、DLSUのチームは、機械学習(ML)モデルを使用して、2020年度のQS世界大学ランキングのデータを用いて、東南アジアの大学における卒業生のエンプロイアビリティに関連する組織的属性を分析した。

このMLモデルでは、データを素早く分析しさまざまな指標をグループ化する。例えば、教員の博士号取得者数、教員一人当たりの研究論文数、論文一本当たりの被引用数など、これらの指標が高い雇用主の評判を正確に予測しているかどうかを検証する。

モデル自体は複雑な数式で構成されているが、結果は「if (イフ) 、then (ゼン) ルール」という形でよりシンプルに表現されている。これらのステートメントは、容易に解釈できる分類スキームを構成しており、大学がこれらのルールを満たすかどうかを簡単に区別できる。

この調査によると、エンプロイアビリティの高さと強く相関する属性は、教員一人当たりの論文数、国際研究ネットワークの存在、教員と学生の比率である。興味深いことに、これらの結果は、研究の生産性と共同研究を非常に重視している。

知識の創造は、歴史の浅い教育機関や新興国では最近になって重視されるようになったが、同研究チームの発見は、今後の大学の優先順位をより詳細に検討することを促すものである。

責任著者であるDLSUのキャスリーン・アヴィソ (Kathleen Aviso) 教授は、「このモデルは、明白でなく直感的にも理解できないデータのパターンの識別を可能にします。このモデルで特定されたルールは、大学が組織パフォーマンスを向上させるのに役立つ戦略を導き出します。我々は皆、学位を取得した卒業生が競争力を持てるようにする必要があります」と話す。

著者らは、なおも隠れている要因がこれらの関連性に影響を与える可能性があることを指摘しているが、このモデルは、大学がさまざまな分野で将来のリーダーをより効率的に育成するためのデータに基づいた出発点である。

上へ戻る