2021年06月
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独バイオンテック、シンガポールでコロナワクチン製造へ

ドイツのバイオンテック(BioNTech)は東南アジアに進出し、2023年までに現地で全面的に営業展開するオフィスとmRNA製造施設を開設する。

AsianScientist - ドイツのバイオテクノロジー企業であるバイオンテックが東南アジア本部とメッセンジャーRNA(mRNA)製造施設をシンガポールに開設することを発表した。この施設は、シンガポール経済開発庁 (Economic Development Board:EDB)による支援を受け、アジアや世界各地の医療ニーズを満たすべく、mRNAベースのワクチンおよび薬剤の迅速な製造を目指す。

バイオンテックは昨年、米製薬会社ファイザーと提携して緊急時使用が初めて認められた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの一つを開発したことで、大躍進を遂げた。このワクチンは米国と英国に加え、シンガポールも最初に承認した国となった。このワクチンには、ウイルスタンパク質を産生しコロナウイルスに対する身体の免疫応答を誘発するmRNAが含まれている。

ワクチンはCOVID-19の蔓延を阻止する重要なツールであるが、その流通やアクセスについては、今なお障壁が残っている。バイオンテックは、現地での製造能力を構築することで、今後いかなるパンデミックの脅威が生じても迅速に対応できるように東南アジアにおける生産能力を高める方針である。

バイオンテックのCEO兼共同創設者のウール・シャヒン (Ugur Sahin) 博士は、「今回計画されているmRNAの製造施設により、当社のネットワーク全体のキャパシティを増やし、世界中の人々に当社のmRNAワクチンや治療薬を製造して届けられるように生産能力を高める予定です」と語る。

最先端の製造・デジタルインフラを備える同施設は、自動化されたエンドツーエンドのmRNA生産能力を発揮する。バイオンテックには、COVID-19ワクチンの提供以外にも、各患者や腫瘍タイプに合わせてカスタマイズできる費用対効果の高い免疫療法など、各種がんに対するmRNA製品のパイプラインもある。また、mRNAベースの技術の用途の広さを考慮し、インフルエンザや結核など、ほかの感染症に対するワクチンの研究も進めている。

この施設が2023年までに全面稼働すれば、バイオンテックの製造拠点で年間数億回分のワクチンが製造される見通しである。一方、現地オフィスについては、早ければ今年中に開設することを目指している。

EDBのベー・スワン・ギン (Beh Swan Gin)長官 は今回の投資について「シンガポールは、バイオ医薬品産業を拡大する戦略の一環として、重要な新しい治療法に関する能力を開発することができます。特に、バイオンテックのmRNA製造施設は、将来のパンデミックの脅威に対処する現地のキャパシティ拡大に大いに貢献するでしょう」と話している。

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