2021年06月
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ラオスの世界遺産で巨石壺群の設置時期特定 国際研究チームが解明

オーストラリアのメルボルン大学は5月10日、同大学の研究者ら率いる研究チームが、世界遺産に登録されているラオスの巨石壺が紀元前1240年から660年の間に現在の位置に設置されたことを特定したと発表した。

写真提供:ジャール平原考古学研究プロジェクト

メルボルン大学のルイス・シュワン(Louise Shewan)博士、オーストラリア国立大学のドゥガルド・オライリー(Dougald O'Reilly)博士、ラオス自然遺産管理局のソングリス・ルアンコス(Thonglith Luangkoth)博士が率いる国際研究チームが、世界遺産「ラオス・ジャール平原」に登録されている巨石壺の下から採取されたサンプルを調査し、この巨石が設置された時期を紀元前1240年から660年の間と特定することに成功した。

光刺激ルミネッセンス(OSL)線量計を用いて、巨石壺の下から採取された土壌サンプルを解析し、最後にサンプルが日光照射を受けた年代を特定した。

ラオス北部に位置するこの巨石群は、高さ3 メートルにもなる削り出された石壺で、重量は20 トンにもなる。その配置様式は、個々に点在するものや、数百もの巨石群を形成するものなど、様々である。シュワン博士らのチームが、バン・ハイ・ヒン(Ban Hai Hin)のサイト1と呼ばれる遺跡を最後に訪れたのは2020年3月であった。以前の調査で、このサイト1には、巨石周囲に比較的多くの埋葬が行われていたことが明らかになっており、サイト全体に散りばめられている外来の丸石が、その下に埋葬されたセラミックの埋葬壺の目印となっている。

シュワン博士らのチームは、新たな放射性炭素年代の結果と地質年代のデータから、ラオス最大の巨石群の一つであるサイト1について、得られたサンプルを他の場所から採取された石のサンプルなどと比較することでその採石場をも特定した。地質学の分野で用いられてきたジルコンによるウラン-鉛年代測定法は、近年、ストーンヘンジを含む考古学的な文脈でも、セラミックや石の起源を明らかにするために用いられている。

本研究の成果により、東南アジアの最もミステリアスな考古学的文化の謎を解く手がかりになることが期待される。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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