2021年06月
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シェアリング電動スクーター、公共交通機関を代替へ シンガポール・MITが研究発表

シンガポールと米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究技術アライアンス(SMART: Singapore-MIT Alliance for Research and Technology)は5月20日、都市部で普及しているシェアリング電動スクーターについて、目的地へ向かうための最後の移動(ラスト マイル)手段としてだけでなく、公共交通機関を代替して、出発地から目的地までの移動手段になり得ることを示し、学術誌Transportation Research Part A: Policy and Practiceに発表した。

シンガポールの電動スクーターは、国内に導入された2013年以降、手頃な価格と利便性が相まって、急速に普及してきた。2019年11月までに、国内で登録された電動スクーターの利用者は10万人に達している。

シンガポールの地下鉄(MRT)の利用者が街中の移動を考える場合、目的地まで地理的に遠回りをさせられるケースが多く、乗り換えや大きな駅構内を歩かなければならない現状がある。

こうした背景のもと研究グループは、国民の選好意識調査と混在ロジットモデル(Mixed Logit Model)を駆使し、シェアリング電動スクーターの利用が、

  1. (1)MRTを利用した時に支払う金額
  2. (2)乗り換えの回数
  3. (3)目的地まで歩かなければならない距離

に影響を受ける可能性を示した。

本研究では、街中の移動手段としてのシェアリング電動スクーターを促進するため、効果的な運用法や活用法、規制についての提言を行うとともに、このビジネスにおける民間事業と公益事業をどのように共存させていくべきか提案している。

論文の筆頭著者であるゼジン・カオ(Zhejing Cao)博士研究員は、シェアリング電動スクーターの今後について次のように述べている。

「我々の研究は、都市部の移動手段において、シェアリング電動スクーターが大きな役割を担う可能性があることを指摘しました。また、シンガポールの中心部の移動においては、公共交通機関の弱点を示しました。シェアリング電動スクーターは今後、既存の公共交通機関の弱点を補いつつ、便利な移動手段として広く世の中に普及していくものと思われます」

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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