卵巣がんの治療法の一つ、プラチナ化学療法に対する耐性や再発を予測する方法を、シンガポール国立大学(NUS)がん科学研究所(Cancer Science Institute of Singapore)の研究者らが発見した。
卵巣がんは、致死性の高い婦人科のがんである。薬物療法を選択した場合、プラチナ化学療法で治療することがあるが、相当数の患者に耐性が出たり、再発したりすることがある。今回の研究から、DNA修復タンパク質RAD51を多く保有することと、プラチナ化学療法後に再発する期間に関連があることが分かった。
RAD51は、DNA損傷の修復をするのに必要なタンパク質である。またプラチナ化学療法によって引き起こされるDNA損傷を修復するのにも重要である。研究チームはRAD51のがんにおける過剰発現がプラチナ化学療法後の生存率に影響を及ぼす可能性があるという仮説を立てた。
研究では、最新の自動化顕微鏡検査法を使用して各腫瘍細胞におけるRAD51タンパク質を映像化して正確な量を計測した。この結果、RAD51量の多い患者の方が少ない患者よりもプラチナ化学療法後に早く再発することを発見した。
さらに、RAD51の過剰発現が、抗がん細胞障害性T細胞の排除にも関連していることも明らかにした。DNA修復タンパク質の増加とがんの変化された免疫応答との関係が初めて判明した。この発見は免疫浸潤を増加させるための治療方法の開発を促し、RAD51は新しい免疫治療法が必要な患者を特定するバイオマーカーになる可能性がある。
この研究は、定量的分子イメージングを使用することによって、がんに関わる細胞の変化の臨床的関連性を見極める方法を明らかにした。自動化顕微鏡検査法は、ほかのがん種においても免疫排除と化学療法耐性の決定因子を特定することに適用できるという。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部