シンガポール国立大学(NUS)は 6月10日、人体を媒体にして、1つの電源から複数のウェアラブル端末にワイヤレス給電し、さらに環境中から未利用のエネルギーを回収(エネルギーハーベスティング)することもできる新しいシステムを考案したことを発表した。この成果は、6月10日付の学術誌Nature Electronicsに掲載された。
ウェアラブル端末は日々進化し、スマートウォッチや心電図パッチなどの形で私達の生活に浸透している。しかし、使用する数が増えるほど、多くの電力が必要で充電にも手間がかかるという問題点がある。解決方法としてワイヤレス給電が考えられるが、従来の方法では、人体が障害物となり持続的な電力供給ができなかった。
この問題を解決するために、NUSのジェラルド・ユウ(Jerald Yoo)准教授を中心とする研究チームは、人体をエネルギーハーベスティングとワイヤレス給電の媒体として利用する新しい受信機と送信機のシステム「ボディカップルド パワー トランスミッション(body-coupled power transmission)」を開発した。これを用いることで、1つの電源から、体に装着された最大10台のウェアラブル端末に10時間以上ワイヤレス給電をすることができ、さらに一般家庭やオフィスで使われている電子機器から未使用のエネルギーを回収し、体中のウェアラブル端末にワイヤレス給電することにも成功した。
ユウ准教授は今回の新技術について「ウェアラブル端末からバッテリーを不要とする可能性を秘めた技術であり、製造コストの削減、機器の小型化が進むことで、次世代のウェアラブル端末を実現することができます」と話している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部