科学者らは、以前は見過ごされていたベトナムのイネの在来種を使用すれば、より気候に強い作物を育てることができると発見した。
AsianScientist - 気候変動がコメなどの重要な食糧供給を脅かす中、ベトナムで新しく発見された在来種を使用すれば、変化する気象条件に対してより弾力性のある改良作物を育てることができるかもしれない。この研究はRiceに掲載された。
炊いた米が好きか、炒めた米が好きか、あるいは寿司や粥として好きかどうかにかかわらず、コメはアジア料理の主要な主食の1つであり続けていることに変わりはない。特にベトナムでは、この作物は9,600万人を超える人々に毎日の栄養を供給している。しかしメコン川のデルタ沿いにおける塩分濃度の上昇や、干ばつの発生により、地元のコメ生産は大きな打撃を受けている。
気候変動が目の前に迫り予想不可能な状況が増える中、研究者らは競って生存可能なイネの品種を特定しようとしている。ベトナムには古来からの伝統的なコメの品種が数多くあるが、農家はより生産的で現代的な品種に切り替えているため、これらにはほとんど手がつけられていなかった。これらの地域に適応したイネの品種は、将来のイネ育種プログラムで活用されるかもしれず、望ましい遺伝子のリソースとなる可能性がある。
このような資源の損失を抑えようと、保管を目的として数千のイネ種子がベトナム国立遺伝子銀行に預けられるようになった。これらの種子の多様性を完全に理解するために、ベトナムの農業遺伝学研究所と英国のアーラム研究所が率いる研究チームは、672の地元由来のイネゲノムを分析し、うち616は初めて配列が判明した。
研究チームは、3000イネゲノムプロジェクトに新しいデータをベンチマークして、以前は見過ごされていた「I5インディカ」として知られる大型イネの亜集団を発見した。著者らによると、I5インディカは、栄養価が高いながらも必要な資源は少なくて済む新世代の「グリーンスーパーライス」の設計に使用できる。グリーンスーパーライスは、耕作地が狭い土地での栽培も目的としており、非常に弾力性のある品種となる。
筆頭著者であるアーラム研究所のジャネット・ヒギンズ(Janet Higgins)博士は次のように話す。
「ベトナムは、特に地方において、イネの栽培の豊かな歴史があります。複数の環境条件と地域性に適応させることで、さまざまな種類が生まれました」
「今回の研究は、この多様性が、国内と世界での育種プログラムにとって、ほとんど未開発で非常に価値のある遺伝資源を構成していることを示唆しています」
そのうえで、ヒギンズ博士は、「IRRIが、私たちの研究で説明したベトナムのI5インディカ品種のいくつかを将来の育種プログラムに組み込むことができれば素晴らしいと思います。この新しいデータは、地球を保護しながら、世界の需要に合わせた持続可能なコメ生産の最適化に大いに役立つと信じています」と結んだ。