2021年08月
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アイシャドウにも含まれる「世界で最も硬い物質」の秘密を暴く

六方晶窒化ホウ素(h-BN)は並外れた硬さを持ち、より大きな圧力に耐え得る。その秘密は、独特の構造と組成にあった。

AsianScientist - シンガポールと米国の科学者らによる国際チームが、地球上で最も丈夫な物質の1つと言われる六方晶窒化ホウ素(h-BN)の並外れた硬度の秘密をついに明らかにした。チームの発見は英科学誌Natureに掲載された。

信じられないかもしれないが、化粧をする人なら、毎日使用するアイシャドウやパウダーには世界で最も丈夫な物質の1つが隠されている。それはh-BNと呼ばれ、わずか1原子の厚さを持つ2次元(2D)構造である。

h-BNが最初に化粧品に使用されたのは1940年代である。h-BNには余分な顔の脂を吸収し、色素を均等に分散させる効果があるため、現在、ほぼすべての化粧品会社はh-BNを使用している。美容分野以外では、h-BNは1000°Cまでの温度に耐えることができるため、絶縁体として電子機器でも使用されている。

h-BNの硬さの秘密を解読するために、シンガポールの南洋理工大学(NTU)と米国のライス大学の研究者らは、圧力にさらされたh-BNのサンプルの破損を調べた。

その結果、h-BNの破損が道路の分岐点のような形になっていることを見いだした。つまり、さらに圧力を加えても、破損個所が拡大する可能性は低いことになる。対照的に、グラフェン(地球上で最も硬い物質の1つと考えられている別の物質)の場合、破損はジッパーのようにまっすぐ進む傾向があり、破損しやすくなる。

h-BNとグラフェンは同じハチの巣構造を持つため、研究者らは、組成の違いが材料の圧力吸収能力に影響を与えるかもしれないとの仮説を立てた。

グラフェンの六角形は炭素原子のみで構成されている。一方、h-BNの各六角形構造は3つの窒素原子と3つのホウ素原子で構成されている。この組成の違いがあるため、h-BNの亀裂には分岐が起こり、その後の亀裂形成にはより多くのエネルギーが必要になることが分かった。

研究者らによると、h-BNの硬度は驚くべきものであるといい、今後、ウェアラブル医療機器や折りたたみ式スマートフォンの製造に応用することが期待される。また、脆くなりがちな2D素材で作られた電子機器を強化するためにも使用できる。h-BNのユニークな特性に関するチームの研究は、電子機器における新たな柔軟素材への道を開くこととなろう。

「私たちの実験から、これまでに測定されたナノ物質の中でh-BNは最も丈夫な物質であることが分かりました。この素材は1原子の厚さしかないため脆いはずですが、素材に固有の強化メカニズムが明らかになり、非常にエキサイティングな研究になりました。ナノ素材の強度と脆性の間にはしばしばトレードオフがあるため、これは予想外のことでした」 筆頭著者であるNTUのガオ・フアジン(Gao Huajian)教授はこのように締めくくった。

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