シンガポール南洋理工大学(NTU)の科学者チームが、30分で結果が分かるマラリア検査キットを開発し、6月29日に発表した。このキットは軽量、簡易で、早期に病気を検出できることが望まれるマラリア診断を容易にするとしている。
マラリア検査キット (写真提供:NTU)
発展途上国におけるマラリアを治療し、蔓延を防ぐ取り組みは、高い費用とインフラ整備不足が壁となって妨げられている。これまでも急速診断テストがあるが、従来の検査は早期の感染を検出することができず、陽性か陰性か、間違えた結果をもたらすことがある。また感染の重症度を測定することができないとの課題があった。
それに対し、この研究を率いるNTUのリウ・クアン(Liu Quan)准教授によると、この検査キットは血液中の寄生虫の数が少ない、早期のマラリア感染さえも検出することができるという。また寄生虫の数を把握でき、医師は患者が闘病する進捗状況を知ることができる。
マラリアに感染した血液の寄生虫を顕微鏡で検査することは、現在、感染を確定するための国際基準である。しかし、この方法は、顕微鏡の使用と専門的なプロセスを実行することを必要とし、マラリア流行国の多くの医療施設では、両方とも不可能である。
NTUの検査キットは、操作するのに血液サンプルと水を使用するだけで、複雑な研究設備に頼らなくてもよい。マラリア寄生虫が血液を消化する際の副産物であるヘモゾインを検出することで機能する。
まず1滴の水以下である10マイクロリットルの患者の血液を水と混合し、赤血球に寄生虫を放出させる。すると検出キット内のポンプが血液混合物を吸引し、化学パッチと接触させることで、ヘモゾインを発光させる。この光りは分光計で検出され、感染の有無、また重症度を判断する。早期感染において、1マイクロリットルあたり125の寄生虫数レベルで検出が可能である。これは現在の急速診断テストよりも感度が高い。
製造費用は、1回分約1米ドル(約110円)で、低コストで大規模な現地検査が可能になる。同チームは検査キットの更なる感度と機能性の向上のための試験を実施するために、産業界のパートナーを探している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部