2021年09月
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排水中における新型コロナ 変異体の検出・定量化に成功 シンガポールとMITのアライアンス

シンガポールと米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究技術アライアンス(Singapore-MIT Alliance for Research and Technology:SMART)の Antimicrobial Resistance (AMR) チームは7月21日、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のアルファ株 を検出し定量化できる分子検出法の開発に成功し、これにより排水中のSARS-CoV-2の変異株を迅速かつ低価格で監視できるようになると発表した。

これはBiobot Analytics社 (米国) 、シンガポール南洋理工大学 (NTU) 、MIT の研究者らとの共同研究で、研究成果は、科学誌Environmental Science & Technology Lettersに掲載された。

感染力と重症度が高いSARS-CoV-2の変異株が世界中で確認されたことにより、便利な変異体追跡法の開発が求められている。中でも排水を監視することは、非侵襲的で安全かつ効率的にウイルスを追跡できるため注目されているが、既存の手法では検出に次世代シーケンサー (NGS) を使用する必要があり、時間とコストがかかる上、感度不足が課題 となっていた。

今回研究チームは、RT-qPCRを用いる手法を開発し、米国の19カ所のコミュニティで排水サンプルを調査した結果、ごく低濃度のアルファ株 のRNAを確実に検出・定量できることが検証された。他の研究機関が自由に使用できるオープンソース的な手法である点も魅力だ。

今回開発された手法はBiobot Analytics社で活用が始まっており、SMARTのAMRチームの主任研究員でもあるMITのエリック・アルム (Eric Alm) 教授は 「同社との連携により、研究成果が現実社会に活かされ始めている。排水中の変異株を監視することで、感染クラスターを追跡し、政策立案者が適切な公衆衛生対策を検討する際の指針となる 」と話す。同チームは現在、世界保健機関 (WHO) が懸念しているデルタ株 を検出・定量化するための手法の開発を進めている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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