2021年09月
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糖尿病患者の血管炎症リスクを素早く評価する手法を開発 NTUとMITの研究チーム

シンガポールの南洋理工大学 (NTU)、同国のタン・トックセン病院 (TTSH)と米マサチューセッツ工科大学 (MIT) の研究チームは7月27日、人の血液からマイクロ流体チップを用いて細胞外小胞 (EV) を抽出し、血管の健康状態を評価する簡単な方法を開発したことを発表した。研究成果は科学誌Royal Society of Chemistryに掲載された。

今回、開発したマイクロ流体チップ 「ExoDFF」 は、現在行われている超遠心分離を用いた方法より素早く簡単にEVを検出できる点が特徴だ。従来の方法では、最大5時間かけて血液からEVを遠心分離し、実験室ごとにEVを抽出・精製を行う必要があった。これに対し、このチップでは血液サンプルを螺旋状の流路に高速で送り込み、遠心力と慣性効果によりEVを分離、濃縮できるため、ワンステップかつ1時間という短時間で分析ができるようになった。

新たに開発されたマイクロ流体チップ 「ExoDFF」 (提供:NTU)

このチップを用いたパイロット試験で、研究チームは、同じ糖尿病患者の中でも、血液中のEV量が10〜50倍も多い患者がいることを発見した。さらに、血管細胞にEVを添加すると、血管の炎症マーカーがより高いレベルで誘導されることが分かり、EVが多い糖尿病患者は血管合併症のリスクが高まる可能性があることが示唆された。

NTUの初代特別大学教授のスブラ・スレッシュ (Subra Suresh) 教授は 「血管の炎症が増加している糖尿病患者を特定することで、侵襲的な治療を必要とする深刻な状態に発展する前に、治療することができる」 と話す。

ExoDFFチップはわずか数ドル(約数百円)という低コストで製造でき、化学物質も必要としない。このため、大量のサンプルを処理できるように設計したり、幹細胞治療などの細胞ベースまたはEVベースの治療法の製造に応用したりすることも可能となる。研究チームは今後、このチップを用いて、自動でEVを分析する「プリンターサイズ」の装置の開発を目指している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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