2021年09月
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新型コロナを正確に判定する安価な検査キットを開発 タイ・チュラーロンコーン大学

タイのチュラーロンコーン大学は7月9日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者が急速に増加していることを受けて、同大医学部のサンチャイ・ペインポン(Sanchai Payunporn)准教授らの研究チームが新しい検査キット「COVID-19 SCAN」の開発を進めていると発表した。

COVID-19 SCANは、タイの公衆衛生局が求めるリアルタイムPCRと同等の分析確度があるだけでなく、経済的で簡便な側面を持ち合わせている。サンチャイ准教授は「多くの国民は、COVID-19の感染リスクを懸念しているにも関わらず、政府の求める検査基準を満たさないため、PCR検査を受けられずにいる。私たちの研究チームは、COVID-19の検査を受けやすくするために、COVID-19 SCANを開発している」と説明する。

検査キット「COVID-19 SCAN」(提供:チュラーロンコーン大学)

COVID-19 SCANは、リアルタイムPCRとよく似た分子検査で、綿棒を使って喉や唾液から検体を採取する。検査に要する時間は、検体の量によって異なるが、1時間半から2時間となっている。この検査は、ある温度条件下で、ゲノムDNAを抽出し複製する。その後、CRISPR-Cas12aシステムを利用して、特定の遺伝物質を検出する。検査が陽性の場合、検体は青色トランスイルミネーターによって発光する。

臨床診断におけるCOVID-19 SCANの有効性は特異度100%、感度96.23%と高い。また、リアルタイムPCRで必要とする機器や場所を必要としないため、地方の医療機関や一般的な診療所に導入しやすいと考えられる。ただ、現状では、検査キットの取り扱いは専門の医療従事者に限られており、費用はPCR検査の半分にも関わらず、個人で使用することができる一般向けの検査キットはない。

COVID-19 SCANは現在、タイ国内の一部の医療機関(チュラーロンコーン大学医学部病院、タイ赤十字エイズ研究センターなど)で使用が始まっている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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