2021年09月
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マカクザルの相互作用がパーム油農園で最小限となる理由

今回の調査から、絶え間ない脅威に直面するとマカクザルの行動はより攻撃的になり、パーム油農園の中では社会的結合の低下を示すことが分かった。

AsianScientist - ある国際研究者チームによると、パーム油農園はマカクザルの社会的行動を変える可能性がある。つまり悪い方に変えるのである。この研究は霊長類を保護するための適切な対策に役立つと考えられる。論文は科学誌 Scientific Reports に掲載された。

ドーナツからデオドラント製品まで、スーパーマーケットの棚にある包装製品のほぼ半分はパーム油を使用している。消費者の貪欲な需要により、インドネシアやマレーシアといった国々の緑豊かな熱帯林の多くが伐採され、パーム油農場に変わった-そして、かつてこれらの森林を故郷と呼んでいた生き物の行動に影響を与えている。

今までは都市部や観光地が動物の行動に与える影響についての研究が行われてきたが、人間によって変えられた生息地が類人猿のように非常に社会的な生き物の行動に与える影響を調査した研究はほとんどなかった。

この問題に対応するために、マレーシアサインズ大学 (USM) の科学者とドイツの共同研究者は、マレーシアのミナミブタオザル (Macaca nemestrina) の2つの社会集団から50個体を追跡し、特に攻撃的な相互作用、関係促進行動、母子関係に焦点を当てた。

「この恥ずかしがり屋の種の中で科学観察者に慣れた最初の個体群となりました。 個体群は毎日熱帯雨林から近くの農園まで約3時間歩きます」

研究の共著者であるUSMのナディン・ルパート (Nadine Ruppert) 博士はこう説明する。

研究者たちが予想したように、マカクザルは主に追加の食料調達場所として農園を使用し、時間の約3分の2を、ラットやパーム油の果実をあさり、食べることに費やした。マカクザルは熱帯雨林の中よりも農園の中の方が行動が攻撃的になった。

おそらく、その場所では人間や野良犬などの脅威から守るものがほとんどないためである。さらに、マカクザルは農園内では相互毛づくろいや遊び行動などといった社会的結合行動もほとんど示すことはなかった。おそらく攻撃者に対する警戒を怠らないためであろう。

逆に、農園の端にある熱帯雨林はマカクザルの安全な隠れ家として機能した。近くの森に守られた中でマカクザルは社会的交流を示しただけでなく、場合によっては、交流はほぼ3倍に増えた。

農園は、グループ内の最小の社会的単位である母子にも影響を与えた。農園の内部と端の両方で、母親は子供と一層多くの身体接触を続けた。チームによると、これは子供の発達の遅れが原因であるかもしれず、母親は子供により多くの時間とエネルギーを費やすようになった。

さらに、母子の絆の時間が長引くと、すでに絶滅の危機に瀕している種の出生間隔が長くなる可能性があり、長期的に見ると個体群の生存がリスクにさらされる可能性がある。

この調査の結果、人間が引き起こした生息地の変化が、群れの社会的行動を大きく変えてしまい、人間との定期的な直接接触がなければ母子関係をも混乱させる可能性があることが分かった。したがって、マカクザルの残りの個体群とその生息地を保護することは最も重要である。

最後に、ルパート博士はマカクザルを保護することについて「最終的には生物多様性と熱帯生息地の重要な生態系機能の維持に貢献し、緑の回廊を保てば、動物たちは不可欠な社会的相互作用に従事することもできます。相互作用は霊長類や他の種にとって長期的な生存に重要なのです」と語った。

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