2021年09月
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胎児期のBPA曝露、自閉症に男性が多い一因に タイや東北大の研究者ら特定

子宮内で「ビスフェノールA(BPA)」に曝露した雄の仔ラットは学習障害と記憶障害を持っていた。自閉症は男性に多いが、BPAがその一因となっている可能性を示している。

AsianScientist - ある国際研究チームが世界で初めて、「ビスフェノールA(BPA)」の性特異的影響の原因であるかもしれない自閉症遺伝子を特定した。この調査結果は科学誌 Scientific Reports に掲載され、自閉症に男性が多い理由の1つはBPA曝露による可能性であるとしている。

BPAという言葉は、一般家庭で使われることはほとんどないが、人々はこれを含む製品を使っている。この物質は水筒、食品容器、CDなどに含まれている。驚くべきことに、この化学物質は環境に散らばるマイクロプラスチックやナノプラスチックのほか、人間の胎盤にも存在し、有害な影響を与える可能性がある。

「多くの研究から、BPAは神経機能を損なうことが分かっています。この機能は、自閉症スペクトラム障害(ASD)では破壊されているのです」

責任著者でタイのチュラロンコン大学の助教授であるテワリット・サラチャナ (Tewarit Sarachana) 博士はこう説明する。

ただ、「BPAがなぜASD罹患の原因となるのか、または罹患率を高めるのか、そしてそれがASDに男性が多いことにも関係しているのかはまだわかりません」とも。

自閉症の罹患率におけるBPAの役割をよく理解するために、サラチャナ博士は東北大学と米ジョージワシントン大学の共同研究者らと、子宮内でBPAに曝露した仔のラットを詳しく調べた。

この研究結果から、妊娠中のBPA曝露は海馬のニューロンの生存率と密度を低下させ、特に雄の仔の学習と記憶を損なうことが分かった。さらに、いくつかの自閉症関連遺伝子の発現が制御されていた。これは、出生前にBPAに曝露すると、これらの遺伝子が男性の自閉症のリスクを決定する可能性があることを示している。BPAの効果に生じる性差は、BPAが雄と雌とで異なる分子メカニズムを通じて仔の脳に悪影響を与えることをはっきり示すものである。

「私たちは、脳内のBPAの性特異的な分子メカニズムを特定するために、これらの問題に徐々に取り組んでいます。BPAの効果とASDにおけるその分子メカニズムを理解することは、BPAの使用に関する方針の変更、あるいは将来のASD治療の分子標的の発見につながるかもしれません」

サラチャナ博士は締めくくった。

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