2021年09月
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会話と歌唱による微細エアロゾルに多くのコロナウイルス含有 シンガポールで研究

シンガポール国立大学(NUS)は8月11日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連し、会話や歌をうたうことにより放出されるエアロゾルが感染伝播の原因になり得るとの研究結果を発表した。研究成果は医学誌 Clinical Infectious Diseases に掲載された。

NCIDの病室で呼気収集装置の実演を行うNUSの研究者(写真提供:NUS)

研究はNUSのタム・クォック・ワイ(Tham Kwok Wai)准教授が主導し、シンガポール国立感染症センター(NCID)で実施された研究の結果、COVID-19感染者の会話や歌唱によって呼気粒子の5 μm(マイクロメートル)以下の微細なエアロゾル化が起こり、これには5 μmより大きなエアロゾルよりも多くの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)粒子が含まれることが明らかになった。

これまでの研究では、呼吸、会話、歌により生成されたエアロゾルの相対量について知見が確立されてきたが、生成されたSARS-CoV-2粒子の量は測定されていなかった。

これに対して、今回の研究では、各行動により排出されるウイルス粒子の初めての定量と比較が行われた。2021年2月から4月にNCIDに入院した22人のCOVID-19陽性患者を被験者として、感染ウイルスの全ゲノムシーケンスを実行してウイルス株を決定した。続いて、同日中に休憩をはさみながら呼気収集装置内で呼吸30分間、朗読の形での会話15分、歌唱15分を行い、呼気粒子を収集した。5 μm以上と以下のものに分け、定量RT-qPCRにより定量した。

研究者らは「特に屋内環境では、微細呼吸器エアロゾルがSARS-CoV-2感染に重要な役割を果たす可能性があるため、感染予防策を計画する際に考慮に入れる必要がある」と結論付けた。また、今後、より感染性が高いとされるデルタ変異体に対しても、同手法を応用した研究を行うことが計画されている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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