2021年09月
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結核の薬剤耐性菌の阻害剤候補を開発 シンガポールで共同研究

シンガポールの南洋理工大学(NTU)は同国科学技術研究庁(A*STAR)が運営する実験的薬剤研究開発センター (EDDC)と共同研究を行い、結核の薬剤耐性菌に対する阻害剤候補を発見した。今後、薬剤耐性菌に有効な薬剤ができると期待される。科学技術研究庁が8月24日に発表した。

結核の薬剤耐性菌の生体内には、重要なタンパク質(酵素)を用いた酸化的リン酸化と呼ばれる過程がある。この過程は生存や繁殖に必要なエネルギーを運ぶ分子の形成を促すため、もし破壊したり阻害したりすれば、薬剤耐性菌は死ぬことになる。

NTU生物科学部のゲルハルト・グリューバー(Gerhard Grüber)教授は、酸化的リン酸化にかかわる主な酵素の構造と機能に関する広範な知識を活用し、同大学物理・数学科学部のロデリック・ウェイランド・ベイツ(Roderick Wayland Bates)准教授とNTUのリーコンチアン医学部(LKC Medicine)のケビン・ペテ(Kevin Pethe)准教授とともに、2つの有望な創薬ターゲットを特定した。

これをもとに、EDDCのハイスループットスクリーニングチームと創薬科学チームの科学者らが2つの創薬ターゲットに対する阻害剤候補を開発した。開発された阻害剤候補については特許を出願しており、現在、製薬会社と権利契約が話し合われている。

EDDCの創薬科学部門の責任者であるパーリー・ウン(Pearly Ng)氏は、「各パートナーが補完的な専門知識を持ち寄る真のパートナーシップがあった。EDDCの能力を活用して化合物を生成し、NTUとリーコンチアン医学部の研究者が生物学的アッセイでテストして、どれが有効でどれが無効かを判断した。こうして私たちは、新しく強力な化合物を集中的に開発することができた」と話している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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