2021年09月
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マインドフルネス療法、不眠症の軽減に期待 シンガポールで研究

夜間によく眠りたいならば、マインドフルネス療法は、睡眠の質を改善する上で積極的な睡眠衛生プログラムよりも効果的かもしれない。

AsianScientist - 眠りに関する問題を抱えているだろうか?シンガポールの研究者らによると、赤ちゃんのように眠る秘訣はマインドフルネス療法であるかもしれない。この研究結果は科学誌 Psychological Medicineに発表された。

あわただしい日常生活の中で、睡眠障害は世界中でますます一般的になってきている。たとえば、シンガポールだけでも、成人人口の約半数が睡眠の量や質の低下を報告している。浅い眠りは 心血管疾患や認知障害などの慢性疾患と関連することから、睡眠の質の改善は急速に公衆衛生の問題になってきている。

不眠症に対するアプローチを求めて、シンガポール国立大学 (NUS) とシンガポール総合病院は協力してマインドフルネス療法の可能性を探った。名前が示す通り、マインドフルネスには瞬間的な思考、感情、体感に注意したり意識したりすること、そして判断や反応なしにこのような経験を受け入れることが関係する。

チームは研究の中で不眠症のためのマインドフルネス療法 (MBTI) と積極的な方法である睡眠衛生・教育・運動プログラム (SHEEP) の有効性を比較し、睡眠障害を持つ127人の高齢者の睡眠転帰を改善できる治療法について調べた。

調査は8週間にわたって行われた。50から80歳の参加者のうち、65人がMBTIコースを、62人がSHEEPコースを経験した。

MBTIコースにはマインドフルに食べること、座禅、マインドフルムーブメント、ボディスキャン瞑想などの実践が含まれ、その後、参加者は過去1週間の経験についてグループディスカッションを行った。さらに、参加者は睡眠改善のための良い睡眠習慣と行動戦略を学んだ。

一方、SHEEPコースの参加者は睡眠生物学および睡眠行動の自己監視に関する情報、ならびに睡眠の質を改善する戦略的変更について学んだ。参加者は横隔膜呼吸、朝と夕方のストレッチ、漸進的筋弛緩などの睡眠促進運動も学んだ。

その結果、全員の睡眠の質は改善したが、研究チームはMBTIがSHEEPよりも不眠症の症状を軽減するのに効果的であることを発見した。具体的に言えば、MBTIの参加者は眠りにつくまでの時間が短く、夜間に目がさめることが少なくなった。これはSHEEPの参加者とは異なる点だった。

「不眠症は過覚醒、つまり眠ろうとするときに『戦うか逃げるか』を決めるシステムの切り替えができない ことと強く関連しています」と、筆頭執筆者であるNUSのジュリアン・リム (Julian Lim) 助教授は説明する。

MBTIについてリム 助教授は「MBTIは行動戦略を使用して、悪い睡眠習慣に直接働きかけます。例えば、マインドフルネス技術はより柔軟な戦略を人々に提供し、非機能的思考や覚醒させる思考に対処できるようにします。MBTIは最先端かつ一般的な療法に失敗した人々やそのような療法を利用できない人々にとって有効かもしれない代替策となります。MBTI療法は、医療現場のグループでもそれ以外のグループでも提供することができ、睡眠の問題をかかえる一般の人々が簡単かつ効率的に相談できる場を与えることができます」と期待を込めた。

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