2021年09月
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ヒマワリの花粉で3Dプリント用インクを開発 NTU

シンガポールの南洋理工大学(Nanyang Technological University:NTU)は8月26日、同大学の研究者らがヒマワリの花粉から3Dプリント用のインクを開発することに成功したと発表した。研究成果は学術誌 Advanced Functional Materialsオンライン版に掲載された。

従来のバイオプリンティング分野では、ハイドロゲル、細胞、バイオポリマーなどを使い、インクを何層にもわたってノズルから吐出して素材をプリントする方法をとっていたが、インクが柔らかくデリケートで、3Dの形状を維持させるのが難しいという欠点があった。またハイドロゲルの合成インクは、ノズルが詰まりやすいという問題点もあった。

そこでNTUの研究者からなるグループは、まずヒマワリの花粉をアルカリ溶液中で培養して花粉のマイクロゲル粒子を生成。次にこのマイクロゲルを、褐海藻などから抽出されるアルギン酸や、体内で作られるヒアルロン酸などと混合して、花粉とハイドロゲルのハイブリッドインクを生成した。

この花粉ベースのインクはノズル詰まりが起こりにくいうえ、丈夫で細胞接着・生成に適しており、再生医学、毒性テスト、および薬物送達に役立つ繊維部品をプリントできると期待されている。そのうえ、このインクは柔軟で廉価でもあり、包帯やマスクなど、人間の肌の輪郭に合った膜組織を製造することも可能だという。

強固なヒマワリの花粉を使用しているため、さらにインク自体としてだけでなく、柔らかいインクをサポートしてインクの形状を保たせる「サポートマトリックス」としても使用できる。研究グループによる論文では、このインクを「サポートマトリックス」として使用し、肘の形状に合わせたシリコンゴムのメッシュを製造した例が紹介されている。

論文の共著者であるNTUのチョ・ナム-ジュン(Cho Nam-Joon)教授は「自然界には様々なサイズ、形状、表面特性の花粉が存在しており、花粉を使って新しい種類の、環境に優しい3Dプリント用素材を開発できる可能性がある」と今後に期待する。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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