2021年09月
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建物外壁の緑化にストレス緩和効果 NTUで研究

シンガポールの科学者によると、リラックスしたい時は壁面の緑を見るだけでうまくいくかもしれない。

AsianScientist - 植物愛好家に朗報がある。シンガポールの南洋理工大学 (NTU) の研究者らは、建物の外側の壁面緑化はストレスを和らげる可能性があると発見した。学術誌 Landscape and Urban Planning に掲載されたその調査結果は、都市部の緑化の取り組みの指針となるかもしれない。

ニュースフィードを下にスクロールすると、植物に関する内容が多いことに気づくだろう。過去1年半にわたり実施された人々を制限する保健対策とロックダウンによって、世界的なガーデニングブームが起こったようだ。誇りを持って「植物の親」を名乗る人が増えてきた。

パンデミックの圧迫感の中で、ガーデニングは多くの人にとって、何とか過ごしていくのに役立ったようだが、家庭以外でのガーデニングの効果はまだ分かっていない。都市部における都市公園や壁面緑化などの緑空間は、持続させる観点から植えられることが多い。何と言っても緑空間は、気温が上昇した際には温度調整に役立ち、地域の生物多様性を繁栄させるスペースとなる。

NTUの研究者らは、緑空間、特に建物の外にある壁面緑化がメンタルヘルスに与える利点を調べるために、仮想現実 (VR) を使用して、花が都市に住む個人をストレスから守ることができるかどうかを調査した。

実験では111人の参加者がVRヘッドセットを使用して仮想の通りを5分間歩くよう設定された。参加者らは、並べられた植物が特徴的な通りと、植物の代わりに緑色の壁を持つ建物しかない通りの2つにランダムに割り当てられた。

実験を一層リアルなものとするために、参加者が仮想の通りを歩いているときには大きな交通騒音を鳴らした。ストレスの指標として、携帯型の心電検査 (ECG) 用デバイスを使用して心拍数の変動を監視した。仮想の通りを歩いた後、参加者は自分のポジティブな感情とネガティブな感情、そして不安のレベルを評価するアンケートに回答した。

興味深いことに、この調査では、緑に塗られた建物を見た人はストレスレベルが高く、通りを歩いている間はあまりポジティブな感情はなかったと報告した。一方、壁面緑化の建物を見た人についてはストレスレベルに変化はなく、その後はほとんどポジティブにもネガティブにも傾くことはなかった。

NTUの博士課程の学生で共同主執筆者のサラ・チャン (Sarah Chan) 氏は「以前の研究では緑の植生の影響を調べていましたが、緑色が単純で基本的な視覚的特徴であるためにプラスの効果をもたらす可能性があるという事実は考えていませんでした。VRのような新しいテクノロジーのおかげで、私たちはこの制限を克服し、対照条件を使用して、調査で壁面緑化と緑の色を比べることができました」と説明する。

別の共同執筆者は、この調査結果は壁面緑化がメンタルヘルスに与える影響を調査した最初の研究の1つとして、都市計画者がメンタルヘルスを育む環境に優しい都市を設計するにあたり、推進力をさらに加速させるものとなるとしている。

今後、チームは再びVRを使用して、建築における天然素材の心理的影響、たとえば、木材とコンクリートの影響を比較し調査することを計画している。

NTUの主任研究員であるキウ・リン (Qiu Lin) 準教授は「今回の調査は、壁面緑化は建築環境に自然を取り込み、メンタルヘルスを向上させる実行可能な方法であることを示しました。都市の緑化に向けた取り組みの指針となるでしょう」と締めくくった。

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