シンガポールで9月3日、アジアデジタル金融研究所(Asian Institute of Digital Finance)の発足式が行われ、同国のヘン・スイキャット(Heng Swee Keat)副首相兼経済政策担当調整相がスピーチし、同国のフィンテック(金融とITの融合)分野で企業を後押しする姿勢を強調した。
シンガポール国立大学(NUS)内に設立されたアジアデジタル金融研究所
シンガポールのフィンテック業界は、飛躍的に成長している。5年前には50社しかなかったフィンテック企業が、現在では1,400社以上となった。また同国フィンテックセクターは、エクイティ・ファンディングとM&Aで10億米ドル(約1100億円)を集めた。これは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下にもかかわらず、2019年に比べて34%高い数値である。さらに同国は昨年、東南アジアで初めてデジタルバンキングのライセンスも発行している。
ヘン・スイキャット副首相によると、シンガポールでは、世界のデジタル金融に貢献するため、政府がフィンテック企業と金融機関を結びつけ、新しいアイデアを実験する手助けをしてきたという。
同副首相はスピーチで、重要な取り組みのひとつとして、MAS、ASEAN(東南アジア諸国連合)銀行協会、国際金融公社のパートナーシップであるAPI Exchange(APIX)を挙げた。APIXは、600社以上のグローバルなFinTech企業と金融機関を結びつけ、クラウドサンドボックス環境を介して新しいソリューションを共同で設計・展開することを支援する。
シンガポール政府は各国の決済システムの連携など、国境を越えたつながりも強化している。最近では、シンガポールのPayNowシステムとタイのPromptPayを連携させた。これにより、シンガポールからタイへの送金が、携帯電話でほぼリアルタイムでできるようになった。今後は、他の国の決済システムとの連携も視野に入れているという。
東南アジアのデジタル経済は2025年までに3倍の3,000億米ドルになると予測されている。「この地域の重要な拠点として、人々の生活を向上させ、地域の経済の活力を高めるために、シンガポールができることはたくさんある」と同副首相は意欲を見せた。 アジアデジタル金融研究所はシンガポール国立大学(NUS)をはじめ、シンガポール金融庁、国立研究財団 の支援を受けて設立された。急成長するフィンテックやデジタルファイナンスの分野で、どのように持続的な影響を与えることができるか注目が集まる。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部