2021年10月
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脳の働きから着想、新しい分子「メモリスタ」開発 シンガポール

シンガポール国立大学 (NUS) は9月2日、国際研究チームと共同で、優れた記憶再構成能力を持つ新しい分子メモリスタを開発したことを発表した。この研究は、科学誌 Nature に掲載された。

今回開発されたデバイスは、既存のものとは異なり、連続した複数の電圧でオンとオフの状態を切り替えることができる分子システムに基づいている。現在、多くの電子機器では、あらかじめ定義された論理機能を果たすように半導体が配線された論理回路が使われているが、このデバイスは、複雑な論理をナノメートルスケールの材料特性を用いて表現することに成功した。電圧をかけることで再構成することができるため、異なる計算タスクを埋め込むことが可能となる。

また、この技術はエネルギー効率に優れており、計算能力と速度を向上させることから、エッジコンピューティングや、電力資源が限られた携帯機器やアプリケーションに利用できる可能性がある。

「今回の成果は、低エネルギーコンピューティングの実現に向けた大きなブレークスルーとなる。1つの素子で複数のスイッチングを行うというアイデアは、脳の働きからヒントを得たもので、論理回路の設計戦略を根本的に見直すものだ」

研究を主導したNUS物理学科のアリアンド (Ariando) 准教授はこのように成果を強調する。

さらに研究チームでは、このデバイスを用いて、現実世界の様々な計算タスクのプログラムを実行し、複雑な計算をワンステップで行い、次の瞬間には別のタスクを処理するように再プログラムできることを実証した。このデバイスは、1つで数千個のトランジスタと同じ計算機能を果たすことができるため、より強力でエネルギー効率の高いメモリーの選択肢となる。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部