2021年10月
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リチウムイオン電池の火災を防止する「ショート防止層」を開発 NTU

シンガポールの南洋理工大学 (NTU)の材料科学者らは、リチウムイオン電池の火災の主な原因である内部ショートを防ぐ方法を発見し、リチウムイオン電池の内部に簡単に追加できる「ショート防止層」を開発した。9月14日付の発表。

従来のリチウムイオン電池(左)。NTUが開発したリチウムイオン電池(右)にはショート防止層が施されている(提供:NTU)

リチウムイオン電池は、携帯電話、ノートパソコン、個人用モバイル機器、電気自動車や航空機の巨大なバッテリーパックなどに使用され、年間数十億個が生産されている。この世界的な電池需要は今後も拡大し、2030年には電気自動車だけでも年間2700GWh(ギガワット)のリチウムイオン電池が必要となり、これは携帯電話の電池に換算すると約2,250億個分に相当する。

リチウムイオン電池の故障率は100万分の1以下と言われているにもかかわらず、2020年にシンガポールで発生したパワーアシスト自転車の火災は26件、パーソナルモバイルデバイスの火災は42件にも及ぶ。

リチウムイオン電池の火災の多くは、充電時に正極と負極の間のセパレーターを横切るデンドライトと呼ばれるリチウムの堆積物が蓄積し、ショートを起こして制御不能な化学火災を引き起こすことが原因となっている。

NTUシンガポール校のシュウ・チセン (Xu Zhichuan) 教授らの研究チームは、このような電池火災を防ぐために、リチウムイオン電池の内部に簡単に追加できる「ショート防止層」を発明し、充電中のショートを防ぐことに成功した。

リチウムイオン電池メーカーであるDurapower Groupの最高経営責任者であるケルビン・リム (Kelvin Lim) 氏は「この技術のブレークスルーは、現在リチウムイオン電池に大きく依存しているe-モビリティや定置型エネルギー貯蔵アプリケーションの電化を目指す当社のビジネスにとって重要だ」とし、「この新発明は同時に、リチウムイオン電池の安全性を高め、寿命を延ばすのに役立つ。これは、EVの走行距離の延長や、バッテリーエネルギー貯蔵ソリューションの稼働時間の延長につながる」と期待を寄せる。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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