2021年10月
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がんを3つのサブタイプに分類、効果的な治療法開発へ シンガポール

血管肉腫に対して新しい分類スキームを使えば、医療専門家はがん患者のためにより効果的な治療法を開発し、選択することができる。

AsianScientist - 国際的なチームが侵襲性の強いがんを3つの小グループ(サブタイプ)に分類する方法を開発中である。皮膚に発生する悪性軟部腫瘍の一つ、血管肉腫(angiosarcomas)をはじめとする侵襲性の強いがんについてふさわしい治療が行えることになるであろう。医療専門家がより効果的な標的療法を行う際に役に立つと思われる。この研究結果は 科学誌 The Journal of Clinical Investigation に発表された。

罹患率の高いがんはよく話題となるが、血管やリンパ管の内部に見られる血管肉腫といった希少がんを軽視すべきではない。アジア人の間で比較的多く見られる血管肉腫は急速に成長拡大し、体のさまざまな場所にコロニーを形成する。

がんが広がってしまったならば、化学療法の効果はほとんど期待できないことは証明済みである。それにもかかわらず、多くの場合、化学療法は唯一の治療選択肢である。

しかし、最近、プレシジョン・メディシン(精密医療)ががん治療の有望なパラダイムとして台頭してきた。プレシジョン・メディシンでは、臨床医が個々の患者のニーズや腫瘍に存在するさまざまな変異に最も一致する可能性が高い治療法を選択する。

可能な限り最良の治療法を選択するには、医療専門家は何と戦っているのかを知る必要がある。そのため、シンガポールと米国の研究者らは、血管肉腫腫瘍の分子ドライバーを詳しく調べ、これらのがんの分類スキームを作り上げるための重要なマーカーを発見した。

シンガポール国立がんセンター (NCCS) とシンガポール総合病院から得た患者サンプルを分析することにより、チームは腫瘍を3つの異なるサブタイプに分割する明確なマーカーを特定した。

たとえば、2番目のサブタイプではがんの成長と広がりに関連する遺伝子が刺激されると腫瘍促進たんぱく質の産生が増加することを発見した。このプロファイルに基づいて、腫瘍に関連する遺伝子を標的とする新しい治療法を開発することができる。

一方、第1・第3サブタイプのグループは主に頭頸部血管肉腫に関しており、第3サブタイプでは高度な炎症が見られ、免疫系からは強力であるが抑制された防御反応が示された。

驚くべきことに、これらの頭頸部腫瘍の半分には突然変異が多く見られ、紫外線 (UV) 突然変異の兆候を示した。これは、紫外線への曝露によって誘発されたと考えられる。UV関連の腫瘍は、免疫チェックポイント阻害剤と呼ばれる種類の薬剤に よく反応することが知られている。免疫チェックポイント阻害剤は、白血球が、がん細胞を認識して殺すのを助け、がん細胞の免疫防御システムからの逃亡を防ぐ。

この研究は、血管肉腫をより明確な方法で分類することにより、腫瘍の成長過程に影響を与える重大な変異と、さまざまな治療戦略に対する患者の陽性反応の有無について明らかにする。チームはこれらのがんをより深く理解することで、より効果的な患者ケアが可能になり、個人を適切な治療に適合させ、最終的には臨床転帰を改善できると期待している。

筆頭著者でNCCSの臨床助教授であるジェイソン・チャン (Jason Chan) 博士は次のように述べる。

「私たちの結果は、既存の治療法を使用してい一部の血管肉腫患者を治療できる可能性を示しているため、非常に有望です。次のステップは、血管肉腫を分子的・免疫学的にさらに解剖して、これらの癌を標的とするにあたりプレシジョン・メディシンの最適な使用方法をさらに詳しく知ることです」