進化には通常長い時間が必要だが、インドネシアの島々に住むセレベスムジチメドリは信じがたいほど急速に多様化が進んだ。
AsianScientist - インドネシアの森の木々にはセレベスムジチメドリと呼ばれる在来の鳥が隠れている。外見からはあまり区別がつかないものの、この鳥の多様化は信じがたいほど急速に進んでいる。この調査結果は、比較動物学の学術誌 Zoologischer Anzeiger に掲載された。
地球の歴史の中で多様な種が現れ、消えていった。新しい種は既存の系統から分岐したものであり、多くの場合、特徴が驚くほど変化している。ダーウィンが観察して進化論を思いついた、有名なガラパゴスフィンチの場合を考えてみたい。
ガラパゴスフィンチは独特の形と大きさのくちばしを持ち、住んでいたそれぞれの島に存在する様々な種類の食物に適応していった。環境の変化と地理的距離によってガラパゴスフィンチの異種交配が妨げられたため、種分化は何百万年にもわたって続いた。
通常、進化はこのようにかなり長い時間をかけて行われるのが普通だがが、セレベスムジチメドリ は例外であることが証明された。ハルオレオ大学(インドネシア)の科学者らは、国外協力者と共に、わずか数千年間でセレベスムジチメドリの多様化が進んだことを発見した。
セレベスムジチメドリ亜種は小さく、丸々として茶色の羽毛を持ち、インドネシアの5つの異なる島に生息している。これらを区別することはかなり難しい。しかし、セレベスムジチメドリのDNAと鳴き声は、離れて住み始めてから短い時しか経ていないにもかかわらず、考えられていたよりも急速に変化していた。
研究者らがセレベスムジチメドリのミトコンドリア遺伝子をもっと遠い関係にある鳥と比較したところ、7%の違いを発見した。7%というのは何百万年もの進化から生じる数値である。しかし、わずか12,000年で、5つの島の亜種は、遠い親戚に見られる遺伝子のうち約3分の1をすでに変異させていた。
セレベスムジチメドリがこれほど早く分岐するとは考えにくいはずだ。何と言っても島々は互いに近くに位置し、隔てるものは浅い海だけある。その気になれば、セレベスムジチメドリは簡単に飛んでその短い距離を横切ることが可能であり、過去2万年の間に島々は地続きでさえあった。
とはいえ、分岐は地理的な距離によってではなく、用心深い性格を持つセレベスムジチメドリが自然と孤立した生活を送ることにより引き起こされた可能性がある。 セレベスムジチメドリは森の地面のすぐ上にある低木層に住み、葉の間でこそこそと隠れながら餌を探すことを好むので移動することはあまりなかった。
調査結果は急速な進化に焦点を当てるだけでなく、スラウェシ島(インドネシア)や脅威にさらされている生物多様性ホットスポットへの注意も呼びかける。 一部の島にはニッケルを多く含む岩があり、それが土壌に浸透すれば、ガラパゴスフィンチがたどった例のように、鳥は適応せざるを得ないかもしれない。しかし、チームは、このような鉱物が採掘業者を引き付け、これらの種の住処は危険にさらされる可能性があると指摘した。
「種分化を通じてこの生物多様性を生み出す上で、どの地域が最も重要であるのかを急いで調べる必要があります。これらの島の生物多様性とその進化動態の全体像を描くには、時間が足りません」と著者らは話している。