2021年10月
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気候変動で崩壊したアンコール遺跡から現代への警告 シドニー大学で研究

周辺の地方都市が持続して繁栄したにも関わらず、クメール王朝(現カンボジア)やメソアメリカ(同メキシコなどの中央アメリカ)の古代都市は崩壊した。新しい研究によると、気候変動への意図的な対応が要因である可能性があるという。研究成果は、米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)に掲載された。

西暦900年から1500年ごろにかけて、アンコール遺跡を含む東南アジア本土のクメール都市群とメソアメリカのマヤ都市群が崩壊した。これは激しい気候変動の時期と一致する。儀礼および行政の中心であった都市群が朽ち果てたにも関わらず、周辺地域は、おそらく回復力のある土地への長期的な投資が理由で持続してきた。

朽ち果てたアンコール遺跡の一部(提供:シドニー大学ダニエル・ペニー准教授)

「人々は農業のための棚田作りと水を制御する堤防による広範囲な地形を作り、それは巨大な水・堆積物・養分の貯蔵庫として機能した。土壌肥沃、水資源の保持と貯蔵への長期的な投資が、都市部が見捨てられた後も、周辺地域を長い間持続させた可能性がある」

主執筆者であるオーストラリアのシドニー大学地球科学スクールのダニエル・ペニー(Daniel Penny)准教授はこのように説明する。

ペニー氏と、米テキサス大学オースティン校ティモシー・ビーチ(Timothy Beach)教授は、東南アジアとメソアメリカに関する考古学および環境情報の調査を通じてこの結論に達した。

都市の崩壊というこれらの歴史的な例は、水資源の貯蔵・土壌肥沃・生物多様性の改良といった、土地の回復力への長期的および大規模な投資によって、都市と地方の両方が気候ストレスの時期を耐えきることを可能にすることを示している。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、今後1世紀にわたって気候ストレスは、世界中の多くの場所でさらに頻繁に、激しくなってくるとしている。

「これらの歴史的出来事は災害としてよく考えられているが、気候変動に対する耐久力・回復力・継続力について、私達に多くのことを教えてくれる」とペニー准教授は語る。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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