フィリピン科学技術省 (DOST) は、オンライン記者会見を開催し安価で長寿命な電気自動車(EV)用鉛蓄電池を開発することを目指し、先端電池センターを新設したことを発表した。10月8日付。
先端電池センターのイメージ (写真提供:DOST)
先端電池センターは、DOSTがホスト大学と共同で設立する 「地域における研究開発のためのニッチセンター (NICER)」 プログラムに基づく研究開発拠点の1つだ。会見では、センターのプログラムリーダーであり、フィリピン工科大学CATALYST TechnoCoReの主席研究員であるドランドレブ・アール・ジャニコ博士 (Drandreb Earl Juanico) から、現在、鉛蓄電池の改良に関する実験が最終段階にあり、12月までにパイロットスケールのテストを実施、4月に市場流通を目指した初期ロットの完成を計画していることが発表された。
現在、フィリピンでは、国が掲げる持続可能なエネルギー構想を実現するために、再生可能エネルギーに関するインフラ整備が検討されているが、設置やエネルギー貯蔵に関わるコストが高く、普及の妨げになっているという課題がある。こうした課題に対し、ジャニコ博士は 「鉛蓄電池はリサイクル性が高く、電池の寿命を25%以上増加させることができれば、競合するリチウムイオン電池よりライフサイクルコストを下げられるため、優位性がある 」 と考えている。
将来的には、他の研究機関と連携して、鉛蓄電池を搭載した電気自動車も開発するといい、 「鉛蓄電池の開発を支える高度な技術を現地化することで、輸入品のリチウムイオン電池に頼らずに済むようになる 」 とジャニコ博士は展望した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部