シンガポールの南洋理工大学(NTU)の研究者が率いるチームは、ビル内の気温を調節し、エネルギー消費を抑制する「スマートウインドー(窓)」を開発した。 10月11日に発表した。研究成果は、学術誌 Joule に掲載された。
エネルギー消費を抑制する窓を開発したNTUのロング・イー博士(左) (写真提供:NTU)
ビル建築では、外気温が低い時には窓を通して室内の熱を失い、外気温が高い時には窓を通して熱の侵入を許すため、窓が最もエネルギー効率が低い部分と言われる。このため、窓の多いビルは冷暖房に多大なエネルギーを必要とし、環境に大きな課題を残す。
そこで、NTU物質科学・工学部のロング・イー(Long Yi)博士が率いる中国やシンガポールの研究者からなるグループは、2枚の窓の間にハイドロゲルを使った液体を注入することにより、ビルの気温調整を可能にする窓を開発した。
この液体は、日中の最も気温が高い時間帯には熱を吸収して不透明になり、太陽光線を遮断してビル内の気温が上昇するのを防ぐ。気温の低い夜間には、この液体は徐々に冷えて熱を放射しながら透明な液体に戻り、翌朝にはまた太陽光線を通してビル内の温度を上昇させる。
この窓は、気温調節に貢献するだけでなく、通常の2重ガラス窓に比べて周囲騒音を15%削減することもわかった。
イー博士は、「我々の実験では、この窓はビルで冷房、暖房、空調に使われるエネルギー消費を50%近く削減できた」とその成果を強調した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部