シンガポール科学技術研究庁(A*STAR)の再製造技術開発センター(ARTC)およびシンガポール製造技術研究所(SIMTech)は、システム統合会社のシスマティック・グローバル(Sysmatic Global)社と共同で、自動ワクチン注入システム(AVID)を開発した。10月12日に発表した。この自動化により、ワクチンを注射器に注入する手間が軽減される。
AVIDは、ロボット部品、スマートセンサー、およびデジタルテクノロジーを使い、バイアルから注射器に自動的にワクチンを吸い上げ、注射器内の空気を抜く。いくつかのボタンを押すだけで操作でき、簡単なトレーニングだけが必要で専門の資格などは必要ない。装置が小型で重量も25kg未満であるため、ワクチンセンターへの移動、設置も容易となる。システムの構想から完成までにかかった時間は、わずか6週間だった。開発にあたっては、タイのワクチンセンターを運営するトンプソンメディカル(Thompson Medical)社が、開発および機器のテストをサポートした。
このシステムは医療従事者の負担を減らし、ワクチン接種の生産性と正確性、安全性の向上をはかるのが狙い。ワクチン準備にかかる手間が減るため、医療提供者はワクチン接種を受ける側とのコミュニケーションに専念できるようになる。
AVIDはすでに、シンガポール保健省が設置したワクチンセンター7カ所で使用されており、一般の医療提供者が操作にあたっている。現時点では、ファイザー社のコロナワクチンのバイラル管理のみをサポートしているが、将来的にはモデルナ社のワクチン用にカスタマイズすることも可能だという。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部